I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
今年から中学2年に進級し、早くも新学期の春が始まろうとしていた。
パーとぺーとは今年も別のクラス、今年も特段変哲のない穏やかな学校生活が始まりそうだと思いながら新しい教室へと足を運んだ。
教室内では、すでに幾つかのグループが出来ているようで、各々朝のホームルーム前に親睦を深めているようだ。
「お、窓際の一番後ろ。ラッキー。」
黒板に張られた席順を見れば、今年は少しツイてるな、なんて少しテンションが上がる。
そうして、自席へと向かおうとしたその時、視界に飛び込んできた情景。
俺は不意に瞳を奪われた。
「…あれ、あんな子、うちの学校にいたっけ。」
窓際の後ろから二番目、つまり、俺の席の前に座る女の子。
色素が薄くて色白で、俯きがちでもわかる端正な顔立ち。
それを包むような艶やかな髪の毛が春風にふかれて少し揺れていた。
まるで洋画のワンシーンから飛び出してきたような少女の姿を、俺は純粋に綺麗だと思った。
こんな美人であれば一度見れば覚えていそうなものだが、全くといっていいほど記憶にない。
仕方がなく、再度、背面に掲示されている席順をチラ見すれば、” 椿木 凛子 ”と記されていた。
「…へー、椿木 凛子さんね。」
そんなこんなしていれば、ホームルームが始まったので、自席へと足を運ぶ。
前の席に座る椿木さんを盗み見れば、何やら先ほどから一生懸命に雑誌を読みこんでいるようだった。
その日は、特別話しかける理由もないまま、半日が過ぎた。
今日から暫く、放課後は新入生の仮入部期間となるので、部活の方も多少バタバタするな、なんて思いながら荷物をまとめていれば、椿木さんがガタンッと大きな音を立てて勢いよく立ち上がる。
そして、何やら荷物を半ばカバンに詰め込むようにしまうと、パタパタと足早に駆けていった。
椿木さんも部活の準備か何かだろうか、と思いながら自分も荷物を持って部室へと向かった。