第51章 一途な総長は大人な彼女と幸せな愛に溺れて(❤︎)
「そうですよ。万次郎くんの我儘は大抵困ったのが多いですけど、それでも貴方のことが好きなので、最後は結局受け入れてしまうんです」
「ウザイって思う時ねえの…?」
「ないですよ」
「それもハッキリ答えんだよなー」
迷う事なく、ハッキリと告げたカノトにマイキーは控えめに笑う。
「あのさカノ…」
「はい?」
「我儘もう一個聞いて」
「何ですか?」
口を開きかけた所で、マイキーは言葉に詰まり、言い淀んでしまう。
「……………」
まるで何かに堪えるようにぐっと辛そうに眉を寄せる。
「万次郎くん?」
そんなマイキーを不思議そうに思ったカノトが心配そうな眼差しを向けた。
「やっぱいいや」
「え?」
「そろそろ行こうぜ」
「あ……」
無理やり笑顔を作り、強引に話を切り上げたマイキーはカノトを追い越し、先に歩き出してしまう。
「……………」
ハッキリ物を言うタイプのマイキーが珍しく言葉に詰まり、言い淀んだ。その時の表情はどこか悲しげで辛そうにも見えた。でも本人は何も伝えようとしない。カノトはそれがもどかしかった。
「(何であんな顔したんだろう…。)」
万次郎くんの我儘は何だったのかな
そんなに言いづらい我儘なんだろうか
「(万次郎くん…いつも通りに見えるけど今日はどこか元気ないな。)」
長い付き合いだからこそ、マイキーのちょっとした変化にも気付けるようになった。今日のマイキーは明るく振舞っているように見えて、カノトが見ていない時に表情が曇り出す。
「(多分今日のデートが楽しくないとか、私自身が何かしたっていう理由からじゃないと思う。もっと別の理由が…)」
「おーいカノー?そんなとこにいつまでも突っ立ってないで早く来いよー」
「あ、はい!」
振り返ったマイキーの声に思考が中断され、カノトは足早に後を追った。
「(無理に聞き出すのは良くないよね。彼から話してくれるまで待ってみよう。)」
そう結論づけたカノトはマイキーの横に並び、手を繋いで動物園を後にしたのだった。
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