第50章 最後のデート
カノトは周囲に誰もいないことを確認すると、マイキーの名前を呼ぶ。
「万次郎くん」
「?」
顔を上げたマイキーに近付き、ちゅっと唇を軽く押し当て、すぐに離れた。
「え…、今…?」
「……………」
「ちゅー…してくれたの…?」
カノトは頬を赤らめながら、恥ずかしさで視線を逸らしている。突然の不意打ちに驚いたマイキーは柔らかな感触がまだ残る唇に指先で触れた。
「私、万次郎くんが彼氏で恥ずかしいって思ったこと、一度もありません。むしろ貴方には感謝の気持ちでいっぱいなんです」
「え?」
「万次郎くんがいるから毎日がとても楽しいんです。多分万次郎くん以外の人だったら長続きしてない。貴方とだから私は幸せだと感じるんです」
「カノ…」
「それに万次郎くんの我儘は…確かに困ったのが多いですけど、それも含めて好きになったので…あまり気にしないでください」
今の気持ちを伝えると、マイキーは嬉しそうに表情を和らげた。
「そうだった。カノは我儘なオレも好きなんだった。こんなオレでも好きだって言ってくれたんだもんな」
「そうですよ。どれだけ一緒にいると思ってるんですか。今更万次郎くんを拒絶したりしませんよ」
「そっかそっか。なら、今抱きしめても拒絶しないってことだな!」
「は!?」
「ぎゅ〜〜うっ!」
背中に両手を回し、抱き竦めるようにマイキーはカノトを全身で包み込んだ。
「オレもオマエの彼氏になれて今すげー幸せ!これからもオレのこと愛して。オレもカノのこと、もっともっと愛すから」
「これ以上にまだ愛を注ぐ気ですか」
「当たり前じゃん。カノがもう要らないって言っても、オレの、オマエへの愛は無限大なの。だから拒否らないで受け取れよ」
「じゃあ…私からの愛も全部受け取ってください。万次郎くんに負けないように、貴方への愛を無限大に注ぎ続けるので」
「オレがカノの愛を拒否ると思ってんの?全部受け取るに決まってンじゃん。オマエがオレのことを想って注いでくれる"綺麗な『愛』"なんだからさ」
嬉しそうに呟いたマイキーはカノトから身体を離し、着ている服に視線を移した。
.