第50章 最後のデート
だが、カノトを見た途端、マイキーはピタッと足を止めて立ち止まった。
「迎えに来てくれてありがとうございます」
「……カノ?」
「どうしたんです?そんな呆けた顔をして」
目を丸くさせ、驚いた顔で固まっているマイキーを見て、カノトは不思議そうに首を傾げる。
「その格好、やばい…」
「え!?」
何故か溜息を吐いたマイキーは片手で覆った顔を俯かせた。"やばい"という言葉が『似合ってない』の意味に捉えたカノトは焦り始める。
「や、やっぱり変ですか?こういう感じの私は似合わないです?これでも結構頑張ったつもりだったんですけど…」
「は?変なわけねーじゃん。"やばい"って言ったのは、似合い過ぎてやばいってこと。直視できないくらい可愛すぎてヤバイ」
「!」
「ちゅーしたい。襲いたい。抱きたい。」
「ダメに決まってるじゃないですか」
「ソッコーで拒否ンなよ!」
手を退けたマイキーの顔は照れているのか、少し赤らんでいた。カノトに拒絶されたことにショックを受けたマイキーが怒った顔で不貞腐れる。
「いいじゃん!ちゅーくらい!」
「しーっ!声が大きい!」
「なぁ!お願い!軽くでいいから!」
「(また始まった…!)」
「最近ちゅーしてねぇじゃん。な?」
「誰かに見られたら困るんで」
「そんな素っ気ない言い方すんなよ!カノに拒否られんの嫌いだって知ってるだろ!」
「もう万次郎くん…」
相変わらずの我儘に呆れて溜息すら出た。そんなカノトを見たマイキーはハッとした様子で、落ち込んだ表情を浮かべる。
「…もしかしてガキっぽいって思った?」
「え?」
「大人のオマエからしたら、こんな我儘で困らせてばかりの彼氏は恥ずかしい…?」
「(全然そんなこと、思ってないのに。)」
「本気でカノを困らせてんなら、これからはもう少し我儘控える、けど…」
「私は…」
「キスは諦めるから、手は繋いでいい?それならオレを拒絶しないで受け入れてくれる?」
「(本当に困った恋人だな。そんな貴方だから、好きになったのに。拒絶なんて、するはずがない──。)」
.