第50章 最後のデート
だが、二人の愛が奇跡を起こし、マドカの目の前でマイキーがカノトを傷付けず守ったことで、マイキーだけは他の不良とは違う事に気付き、あれだけ毛嫌いしていたマイキーをカノトの恋人として認めた。
「もし佐野に無理やり襲われたらすぐ俺に言えよ?すっ飛んでってアイツをぶん殴る!」
「マイキーくんを殴ったら兄さんと絶交だから。というか私が兄さんを引っぱたく」
「ガーン…!!」
カノトの冷たい言葉に激しくショックを受けたマドカは肩をがっくりと落とし、しょぼんと落ち込んだ。
「ココアご馳走様」
「最近可愛い妹の言動が冷たい…!」
顔を両手で覆い、しくしくと嘘泣きを始めるマドカを無視してソファーから立ち上がり、リビングを出て行こうとしてドアの前で立ち止まる。
「兄さん」
背を向けたまま、まだ嘘泣きをしているマドカに言葉を投げ掛ける。
「ありがとう」
「?…急にどうした?」
嘘泣きを止めたマドカは不思議そうにカノトの後ろ姿を見つめた。
「私、兄さんがいてくれて良かった。兄さんの存在があったからずっと頑張ってこられたんだよ。だから色々と…本当にありがとう、兄さん」
「なんか別れの言葉みたいに聞こえんのやだな…。二度と会えないみてえな言い方じゃん。え…佐野のトコに行ったまま、帰って来ないなんてことはないよな!?」
「それはないから安心して」
カノトは誤魔化すように笑う。
「つーか、礼を言うのは俺の方だぞ。お前がいてくれるから俺は幸せだって感じる。毎日が楽しくて幸せなんだ。お前は俺の生きる理由だよカノ。本当にありがとな」
同じ"ありがとう"でも、マドカはきっとカノトが伝えた"ありがとう"の本当の意味を知らない。けどそれでもいいと思った。この時代で自分の大切な人が幸せだと笑って暮らせているから。
「これからも『私』を見守っててね」
自然と口許に笑みが浮かぶ。
「じゃあ着替えてくる」
マドカの方を見ないまま、カノトはリビングを出て行った。
「…カノ?」
マドカはいつも違う妹の違和感に気付き、既にリビングを出て行ったカノトの名前を呼んだ…。
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