第50章 最後のデート
「(やっぱり…未成年で泊まりは無理かな。)」
「…そうか」
「!」
「楽しんでこいよ」
「いいの…?」
「佐野の家に泊まりだろ。本当は心配だし泊まらせたくねーんだけどな。お前らまだ中学生だし、未成年だし、佐野は狼だし。」
「マイキーくんは狼じゃないよ」
「ばっかお前!男はみんな狼なんだよ!夜にだけ変身する獣だぞ!可愛い妹が食われたらどうすんだよ!」
「(実はもう体を捧げました…なんて言ったら兄さん失神して倒れそう。)」
昔から男に対して厳しい一面を持つマドカ。それは大事な妹を守る為だが、たまに過剰に反応してしまう時があり、カノトの悩みの種になっている。
「佐野のことだ!一緒のベッドで仲良く眠るだけじゃ絶対に済まないだろ!アイツのカノへの愛は深いからな!二人きりになった途端、襲うに決まってる…!」
「偏見強すぎない?」
「あぁ…急に眩暈が…」
額に手の甲を当て、わざとらしくフラッと体を揺らすマドカ。
「(昔から私に近付く男はみんな兄さんが牽制してたもんな。兄さんが『皇帝』だって知らずに私に告白してくる人もいたっけ。)」
マドカは不良の世界では名の知れた有名人で、喧嘩の強さから『皇帝』という異名で恐れられていた。本人は不良ではなかったが、売られた喧嘩は買う主義で、何人相手だろうと一切手加減せず、敗けた事がないため恐れる者も多かったが、その強さから憧れる者も多かった。
「でもお前らの仲を認めちまったからな。行くなとは言えねーだろ」
「!」
「安心しろよ。もうお前らの関係を壊したりしない。想い合う二人を引き離すのは間違いだって気づいたからな」
「兄さん…」
「せっかく真一郎が引き合わせてくれたんだ。ここで邪魔したらアイツに叱られる」
「ありがとう」
以前までマドカはカノトとマイキーの関係を頑なに認めなかった。マドカがマイキーを嫌った原因は別にあるのだが、元々マドカは不良というものを心の底から毛嫌いしている。
だからマイキーが不良というだけで強く軽蔑し、激しく憎み、想い合う二人の仲を強引に引き離した。それが間違いだと気づけないまま…。
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