第49章 手放せない愛を抱えて
「どうしてそういうこと言うんです!」
「カノが悪いんじゃん!オレがいんのにオレ以外の奴も好きだって言うから!」
「同じ万次郎くんなんですけど…!」
「それでも嫌なものは嫌なんだよ!!」
「(ここまで嫉妬深いとは…)」
「なぁ…オレだけ好きって言って」
声のトーンを落としたマイキーは寂しそうな顔をする。そんなところを見てしまったら無下には出来なくて…。
「好きですよ、万次郎くん」
「そいつよりもオレが好きって誓える?」
「……………」
「何で黙るんだよ」
「だって本当にどっちの万次郎くんも好きなんですもん」
「やだっつってんじゃん。どっちか一人に決めろ、今すぐ。」
「またそんな我儘…」
「カノ、好きだよ。オレがオマエを一番愛してる。だからオレにしてよ。未来のオレより…今のオレを選んで。」
手を繋がれ、こつんと額を合わせられる。
「じゃあ万次郎くんは、26歳の私と14歳の私だったら、どっちが好きですか?」
「!」
「(少し…意地悪な質問だったかな。)」
「そんなの、26歳のオマエに決まってんじゃん」
「!」
「そりゃあ今のカノももちろん好きだよ?でも一緒に何処か出掛けたり、一緒に戦ったり、一緒に過ごす時間が多かったのは未来のカノだし、ハジメテを捧げてくれたのだって26歳のオマエだろ?オレがカノと会う中で、一緒に過ごすことが多いのは未来のカノだった」
「(私のほうが万次郎くんと過ごす時間が多かった…)」
「そうなるとさ、どうしても26歳のカノといるほうが嬉しくなるんだよ。だから好きの感情も、正直、未来のカノのほうが遥かにデカい」
「っ…………」
カノトも14歳の自分に嫉妬したことがあった。現代に帰っている間、マイキーの傍にいるのは14歳の自分だからだ。そして自分の知らない場所や知らない話をマイキーから聞かされるのも正直良い気分ではなかった。
だから未来のマイキーに嫉妬するマイキーの気持ちも分からなくはない。でも彼はハッキリと口にした。14歳のカノトより26歳の自分の方が好きだと。"答え"はそれだけで決まっていた。
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