第49章 手放せない愛を抱えて
「だから私は、兄さんのいないあの世界で、生きることを選んだんです」
「……………」
「でも独りでいると、どうしても兄さんのことを考えちゃって。いろんな感情が溢れ出してきて…泣いてしまうんです」
悲しい瞳を揺らしながら、カノトの顔が段々と泣きそうになっていく。
「泣いても無意味だって分かってます。でも駄目なんです。どうしても兄さんの生きた世界を求めてしまう。弱い私を守ってくれてたのは…いつも兄さんだったから」
「……………」
「…そんな時です。電車に轢かれそうなタケミチくんの側にいたら、彼と一緒にタイムリープしてしまったんです」
どれくらい話しただろう
万次郎くんはたまに深く頷いて
私が震えていると手を握って
ただ静かに話を聞いてくれた
「っ、ふ……ぅ、う……」
話していくうちにその時の事を思い出し、次第に感情が溢れてきたカノトは、堪えていた涙を溢れさせた。
「…カノ」
マイキーが優しく名前を呼ぶ。
「ごめんなさい万次郎くん…っ、私…エマちゃんを…場地さんを…未来の万次郎くんを…救えなかった…っ、ごめんなさい…本当に…ごめんなさい…っ」
「もう泣くな。そんなに泣いたら後で目が腫れんぞ。だから泣き止め?」
「ひっく…」
「いつもなら泣き顔もそそるけどさ、今その顔見んのは辛い。ほーらカノ、もう大丈夫だから泣くなって」
カノトの目尻に触れ、ポロポロと溢れる涙を指先で優しく拭う。
「まん、じろーく…ひっく…」
「いろんなモンを抱えて頑張ってきたんだな。マドカさんを亡くしたオマエの気持ちは痛いほど分かる。今まで傍にいてくれた人が突然目の前からいなくなったら怖いよな」
「(真一郎さんのことを思い出してるのかな…)」
「カノはずっと…そんな世界で独りぼっちで生きてきたんだもんな」
そう語るマイキーの瞳は寂しさと悲しさが混ざったような感情が垣間見えた。
「不思議だったんだ」
「え?」
「初めてカノとタケミっちを見た時。喧嘩賭博でキヨマサにボコボコにやられてるタケミっちと、怖いのにダチを守るために必死に立ち向かうカノ。」
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