第49章 手放せない愛を抱えて
「万次郎くん、交換しましょうか」
「カップ熱いから気をつけろよ」
「はい」
マイキーが作った方のココアを受け取り、立ち昇った湯気に軽く息を吹きかけてから冷まし、マグカップに口を付けて、一口飲む。
「(…あれ?ココアってこんなに甘かったっけ?前に作った時はここまで甘くなかったはず…)」
前にマイキーの家でココアを作った時よりも、ずっと遥かに甘くて美味しかった。むしろもっと飲みたいとさえ思ってしまったのだ。
「(それに…幸せな気持ちにもなる。)」
カノトは原因が分からず困惑顔を浮かべる。その様子をマグカップに口を付けながら見ていたマイキーが可笑しそうに笑う。
「どう?オレが作ったココアの味は?ちゃんと隠し味もたっぷり入ってるからめちゃくちゃ甘いだろ?」
「確かに…甘すぎて溶けそうです」
「溶けるだけ?」
「………………」
マイキーが何を言いたいのか察したカノトの頬がほんのり薔薇色に染まり、恥ずかしげに視線を逸らす。
「オレとちゅーしたいって気持ちになってんじゃねえの?」
「そ、れは……」
「カノが作ってくれたココアもすげぇ隠し味利いててさ、飲むとめっちゃ甘ぇの。な、カノの愛情に酔っちゃったからちゅーしていい?」
「ノンアルなんですけど…」
「ココア飲んだらカノとちゅーしたくて堪らないってオレの唇が訴えかけてくんの。それにカノだってオレとちゅーしたくて堪らないって顔してる」
「っ…………」
「なぁ、ちゅーしよ」
マイキーが身体を寄せてきて、更に距離が縮まる。カノトはドキドキと脈打つ鼓動を感じながら、照れた顔でマイキーを見た。
「私も…その…万次郎くんの愛情に酔ってしまったかもしれない…です」
「!」
「なので…キスしてほしい、です…」
「ノンアルなのに酔っちゃったんだ?」
「っ、そうですよ…」
「そっかそっか」
マイキーはニマニマと笑っている。
「何です…笑って」
「いや?ほんと可愛いなって。カノがオレの彼女で幸せだなーて感動してただけ」
「何ですかそれ」
「めちゃくちゃ大好きってことだよ」
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