第48章 打ち砕かれた野望
「!!」
「どんな悪い奴でもやっぱり…死んじゃったら悲しいよ。それが殺したいほど憎くて堪らない相手でも…さ」
「……………」
千冬はなんて言葉を返したらいいのか分からず、視線をカノトから逸らす。
「それに…稀咲は兄さんを殺してない」
「え!?」
「多分、アイツの話に嘘はなかった。何か知ってる口振りではあったけどね」
「稀咲じゃないなら一体誰がオマエの兄貴を殺したって言うんだよ…?」
「……………」
『けどそうか、やっぱり兄貴は死んだか!』
「わからない…もう…心当たりがない。稀咲が口にしたあの言葉の真意すら…闇の中に消えた。これでまたふりだしに戻っちゃった」
三角座りをし、交差させた腕に顎を乗せ、悲しげに瞳を揺らす。
「半間の可能性は?」
「!」
「オマエを完全に手に入れる為には兄貴は邪魔なハズだろ?だから半間が手を下した可能性も…」
「ううん、それは不可能だよ。半間は兄さんを殺した犯人じゃない」
「何で断言できるんだよ?」
「兄さんが殺される直前まで一緒にいたし、そもそも背丈が違い過ぎる。半間って多分190近いでしょ。あの時見た犯人はそんなに背は高くなかった」
「そっか…」
「(心のどこかで稀咲が犯人だと決め付けていた。でも犯人は別にいる。稀咲は兄さんが殺される事を知っていたかのような口振りだった…まだ見つからない。一体、誰が兄さんを殺したの…)」
「うおおおおおお!!!!」
「!?」
突然立ち上がったタケミチが雄叫びを上げ、川に向かって走り出す。
「おっ、おい!タケミっち!?」
「何してるの!?そっちは川だよ!?」
二人して慌てたような顔を浮かべた。地面を踏んでぶわっと飛んだタケミチは、あろう事か、川に飛び込んだのだ。
「タケミっち!!!?」
「自暴自棄になって自殺!?」
「縁起でもねぇこと言うな!」
「全然上がってこないけど…!!」
オロオロと取り乱すカノトはタケミチを助けようと自分も川に飛び込もうとする。
「ちょっ…何してんだよカノ!!」
「溺れてるかもしれない!!助けなきゃ!!」
千冬はそんなカノトを必死に止める。
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