第48章 打ち砕かれた野望
その夜、エマの告別式が執り行われ、カノトも葬儀に参加していた。
「(エマちゃん…)」
遺影写真に写るエマの表情はとても穏やかで、死んだ事が嘘のように思える。それでも納棺が置かれているのを見ると、あの中にエマが眠っているんだと悲しくなった。
「(結婚式のスピーチ…楽しみにしてたの。エマちゃんならどんなスピーチをしてくれるんだろうって。サムシングフォーだって、どんな物を用意してくれるんだろうって…すごく楽しみにしてた。)」
それが今じゃ叶わなくなり、泣きそうになる。
「この度は妹エマの…」
エマの葬式でもマイキーは毅然としていた。普段は袖に通さず羽織っているだけの制服も、今日だけはボタンまでしっかり留められている。
「(こんな悲しい気持ちになるのは…兄さんの葬式以来だ。あの時の私は、兄さんのいない世界に絶望して抜け殻みたいだった。)」
そしてエマの納棺の前に座っていたドラケンが万作とマイキーの方に体を向けた。
「エマさんを好きでした」
「(ドラケンくん…)」
「申し訳ありません。彼女を守れなかった」
静かに頭を下げたドラケンを見ていたら悲しさと切なさが混ざったような感情に押し潰され、目頭が熱くなった。
「そうか…オマエも好いとったか…アイツもきっと浮かばれる」
「ぐっ、うぐっ、う"う"っ、ぐふっ」
エマを守れなかったドラケンを責める訳でもなく、万作は優しく微笑んだ。それを聞いたドラケンは涙を流し、声を押し殺して泣いた。それにつられて、カノト達も涙を流した。
佐野エマおよび
黒川イザナの殺害事件は
主犯 稀咲鉄太
共犯 半間修二
の2名の犯行として処理された
稀咲鉄太は死亡
そして───……
「おっちゃん、おあいそー」
「なんだ?なんか事件か?」
ラーメン屋の店主が外から聞こえてくるパトカーのサイレン音に気付き、驚いた声色で言う。
「最近物騒な事件多いからなぁ」
スープまで飲み干した男は席を立ち、扉を開けて暖簾を潜ろうとする。
「まったく、つまんなくなっちまった。逃亡者にも飽きてきたな♥」
半間修二は今も
逃亡を続けている
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