第48章 打ち砕かれた野望
「(ねぇ神様…確かに私は彼に罰が下ると言った。でも…こんな罰は認めない。)」
悲しみと怒りで胸が締め付けられ、熱くなった目頭から涙が溢れる。
「(どんな悪人でも…たった一つの命を奪うような悲しい最期なんて…)」
逮捕者は天竺幹部5名
死者は佐野エマ
黒川イザナ
稀咲鉄太の3名
「そっか…鶴蝶は一命を取り留めたんだね。正直あの状態からの回復は難しいと思ってたけど、きっとイザナが助けてくれたんだね」
数日後、鶴蝶のお見舞いに行ったタケミチから電話が掛かって来て、意識不明の重体だった鶴蝶が生きていたことを知らされた。
《でも天竺の解散には嘆いてたよ。案の定、自分だけが生き残っちまったことに落ち込んでた。》
「鶴蝶がそこで前に進む事を止めたら、本当にそれまでだろうね。でもイザナが命を懸けて助けたんだ。その命をどう生かすかは彼次第だよ」
《うん、オレもそう思う。》
するとタケミチの声のトーンが一段下がり、それに気付いたカノトは不思議そうな顔をする。
「どうかしたの?」
《なぁカノちゃん…稀咲は死んだ。これでオレらの戦いは終わり…だけど…》
「……………」
《それなのに…》
「震えが止まらない?」
《!なんで…分かるんだよ…。オレまだ何も言ってねぇのに…》
「君とは何年の付き合いだと思ってんの。友達の声の変化くらい気づけるよ」
そう言うとタケミチは"すげぇなカノちゃんは…"と元気がない声で誉めた。
「それに…私もなんだ」
《え?》
「稀咲が死んだあの日から、夢見が悪い。真夜中に飛び起きたらさ、体中汗まみれ。また…眠れなくなっちゃったよ」
《カノちゃん…》
「ずっと苦しめられた悪夢から解放されると思ってたのに…何なんだろうね」
微かに震えてる掌を見下ろす。現代(みらい)ではマドカが死んだ日から眠れなくなり、目の下に隈ができた。それが過去でも同じ症状に悩まされるとは思わなかっただろう。
「(不眠症にならないと思ってたのに…こっちでも眠るのが怖いなんて。)」
"死"と云うのはどこまでも付き纏う。記憶から消そうとしても簡単には消せない。カノトは辛そうに目を閉じた。
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