第48章 打ち砕かれた野望
すると逃げ続けていた稀咲が、信号の白線の上で突然立ち止まった。
「「?」」
「『未来に帰す』…?だと…?」
振り返った稀咲がニヤリと笑む。
「オマエら…まだオレがタイムリーパーだと思ってんのか?」
「え?違うのか?」
「君は…僕達と同じで、未来からタイムリープしてきたんじゃないの?」
「オレは」
ドップァァァン!!!
突如けたたましく鳴り響いたトラックのクラクション。稀咲の体は車体に当たり、勢いよく吹き飛んだ。
「………、稀咲?」
「ひッ、うぁ…っ」
短い悲鳴を上げ、思わず口を手で押さえる。目を覆いたくなるほどの残酷な光景に喉の奥から気持ち悪さが押し寄せた。
「フゥー、フゥー…」
顔を真っ青にさせ、乱れた呼吸を整えようとする。こんなに激しい事故現場を間近で見たのは初めてで衝撃的だった。
体が車体にぶつかる音が生々しく耳にいつまでも残って離れない。ギュッと瞼を強く閉じる。
「ハァ…ハァ…ハァァ…」
"自分をしっかり保て"
"現実から目を背けるな"
自分に言い聞かせるように強く語りかける。
「ふぅぅぅ…」
閉じていた瞼を押し上げ、稀咲を見た。地面に放り出された稀咲の体は血まみれで、手足の関節が折れて有り得ない方向に曲がっており、頭は地面で擦ったのか、頬の下まで皮膚が剥がれていた。
「あ!!?あ"ぁ"あ"ぁ"あ"!!ぐぞっなんだコレ!!?どうなってんだコレ!?立てねぇぞ!!」
顔から血を流した稀咲は激痛で絶叫する。
「死にたくねぇ…」
死の恐怖に怯えながら、今まで散々苦しめた黒幕は───息絶えた。
「……………」
力が抜けたようにカノトの体がバランスを崩し傾いた。すると倒れる前にカノトの体をマイキーが抱き留める。
「何があった…?」
マイキーの視線の先には、コントロールを失い、壁に激突したトラックと、その傍らに倒れている稀咲の亡骸があった。
───関東事変。
神奈川最大の不良集団・横浜天竺と
東京最大の暴走族・東京卍會の
総勢約500名によるこの抗争は───
逮捕者5名 及び死者3名を出す
凄惨な結果で幕を閉じた。
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