第48章 打ち砕かれた野望
「何度も何度も」
「橘はオレの彼女(オンナ)だ!!テメェなんかに渡さねぇ!!渡すぐらいなら殺してやる!!」
それが稀咲がヒナを殺し続ける理由。タケミチを憎む理由だった。自分以外の誰かに奪われるくらいなら自分の手で好きな女(ヒト)を殺す。彼女が誰のモノにもならず、自分を好きになってくれる未来に辿り着くまで何度も…。
けれど、橘日向の心はずっと花垣武道に向けられたまま。稀咲はそれが許せなかった。
「なんでだ!!?こんなにも愛してるのになぜ橘日向は振り向かない!?原因はオマエだ!!リスペクトしてたのに!!裏切りやがって!!もっと早く殺すべきだった!!」
稀咲はタケミチを元凶と罵る。ヒナを殺し続けた理由を知ったタケミチは怒りが頂点に達し、片足を蹴り上げ、銃を弾き飛ばす。
「はじめから…こうするべきだった」
転がってきた銃を拾い上げ、稀咲に突きつける。
「死ね…稀咲!!」
「撃っちゃダメだ!!」
ビクッ
後ろから聞こえた声に驚いて体が跳ねた。
「カノト…!!マイキー君!」
息を切らしながら駆け付けたカノトと一緒にマイキーがいて、タケミチが稀咲を殺そうとしている場面を見たカノトが咄嗟に叫んで慌てて止めた。
「タケミチくん、銃を下ろして。僕は君に人を殺してほしくない。こんな奴の為に君が罪を犯す必要なんてないよ」
「……………」
「君が稀咲を殺してしまえば、それこそ本当に運命は狂って、あの『最悪な未来』に繋がってしまう」
「カノト…」
「ヒーローはさ、そんな物騒な物使わなくても悪者に勝てるだろ?」
「……………」
「ね?」
「そうだな…」
「僕達は誰よりも頑張ってきた。必死にもがいて、前に進んできた。それを台無しにするのは少し勿体ないよ」
優しく語りかければ、タケミチは銃を下ろす。それを見てカノトはホッと安堵の表情を浮かべる。
「稀咲!!!」
「え!?」
話してる間にも、稀咲は逃亡を謀る。
「ほんっと往生際の悪い奴だな…!」
「逃がすかよ!!」
二人は同時に走り出し、逃げる稀咲の後を必死に追い掛けた。
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