第48章 打ち砕かれた野望
「マイキー君に固執してるオマエが東卍を欲しがるのはわかる。なんで毎回ヒナを殺す?」
「………、そうか…オレは…失敗したんだな」
「?」
ドクンッ
その時、タケミチの脳裏にあるビジョンが映し出された。雪の降る日、この駐車場で稀咲がヒナに結婚指輪を差し出し、それをヒナが断って立ち去ると云う鮮明な映像だった。
「(この場所で未来の稀咲が、ヒナに告白してた!?)」
タケミチは自分が知らなかった真実を知り、驚いた顔を浮かべる。
「稀咲…オマエ…もしかして…ヒナの事が…」
そこまで言いかけたタケミチに銃が突きつけられる。
「オレとオマエの因縁もここで終わりだ。最後だから教えてやるよ」
稀咲は"武道を憎む理由"と"ヒナを殺し続ける理由"を語り始めた。
小学生の頃、神童と呼ばれていた稀咲は同じ塾に通う橘日向に一目惚れをした。もちろん神童と称される自分の事を当然ヒナも好きに決まってる、そう思っていた。
だがそこに突然、"花垣武道"というヒーローが現れた事で、ヒナの心は一瞬で奪われてしまう。その日からずっと稀咲はタケミチのことを付け回した。
"日本で一番の不良(ヒーロー)になる"と宣言したタケミチの言葉が気になり、自分も全く知らなかった不良について調べ、そして本物にも接触した。
その相手こそが【東京卍會総長 佐野万次郎】。
マイキーは間違いなく日本のトップになれる器で、自分が操る傀儡に相応しい。稀咲が日本一の不良になる為の最高の"媒体"だった。
10年かかる壮大な計画の中心。マイキーの信用を得るのに1年。操るに至るまでは更に2年かかる事を見通し、そして共に東京を制するまでに3年。
日本を牛耳るまでに4年。稀咲が日本一の不良と呼ばれるまで計10年。
「そしてオレは晴れて橘日向と添い遂げる」
あまりにも身勝手で自己中心的な計画に、タケミチは激しい憤りを感じ、稀咲を鋭い眼光で睨み付ける。
「なのにテメェは何度オレの邪魔をした?あ!!?何度タイムリープした!!?あ!!?」
「フラれた腹いせに…ヒナを…殺してたのか?」
「!!」
グッと眉を顰め、涙を浮かべた怒り顔で歯を噛み締め、憎悪と怒気を含んだ声で言えば、図星を突かれ稀咲は驚いて目を見張った。
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