第47章 12年後に死んでしまう君へ
「万次郎くん…」
もう一度、泣きそうな声で呼べば、マイキーに後頭部を引き寄せられ、耳元で囁かれる。
「ありがとうカノ。よく頑張ったな。ずっと前からオマエにベタ惚れだけど、今日更にまた惚れ直した」
「万次郎くんの…彼女です、から…」
「うん、流石オレの自慢の彼女」
マイキーが嬉しそうに笑う。
「終わったらたくさんギュッてさせて。」
「はい」
「後は任せろ」
耳にチュッと触れるだけの口付けをし、ポンッと優しく頭に手を置いて傍を離れる。
「でもなんで…?とても来れる精神状態じゃなかったハズ…」
タケミチの元に戻って来たマイキーにそう言うと、ブォンっとバイクの排気音が響いた。
「ドラケン君!!?なんで二人共来れるんだよ!?」
「降りなよヒナちゃん」
「え!?」
「(ヒナちゃんがどうして!?)」
ドラケンが運転するゼファーの後ろにはヘルメットを被ったヒナが何故か一緒に乗っていた。
その理由は、少し前に遡る──……。
◇◆◇
阿佐ヶ谷病院にて。
「あの…少し…話してもいいですか?」
カノト達が去った後、戦意喪失し、俯いたままのマイキーの前にヒナが現れ、近くにいたドラケンも彼女の存在に気付く。
ヒナは今から話す事が二人を怒らせてしまうかも知れないという怖さで体が震えていた。それでも勇気を振り絞って、話し始める。
「タケミチ君は…エマちゃんを救えたハズだって思ってます」
「!!おい!!テメェ今そんな話すんじゃねぇよ!!正気か!!?」
案の定、ドラケンに怒鳴られ、ヒナはビクッと体を跳ねさせる。
「…おかしいだろ?タケミっちもヒナちゃんまで…こんな日に何言ってんだよ?もう…そっとしといてくれ…」
残酷な言葉をぶつけているのは分かっていた。マイキーとドラケンが悲しむ事も。それでも二人にもう一度、立ち直ってほしいヒナは涙を浮かべながらも話を続ける。
「エマちゃんだけじゃない。タケミチ君は救わなきゃって思ってる人が沢山いる」
「!だから何を…!!」
「私、死ぬんです」
「!!?」
「12年後、死ぬんです。」
ヒナの信じ難い発言にドラケンは目を見張り、驚いた顔を浮かべる。
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