第47章 12年後に死んでしまう君へ
「あー顔腫れてンじゃん。でも勇者チャンはボコられても美形だなァ。相変わらず強ぇし、惚れ惚れする♥」
「その割に疲れた顔してっけどな。あれだけの人数を相手にしてんだ、そろそろアイツの体力も限界に近いだろ」
「大将は分かってねーな。勇者チャンは、どんなに疲れようが、ピンチに追い込まれようが、ぜってーに諦めねぇの。そこがスゲーかっけぇだろ?」
「……………」
ニヤリと笑う半間を無視して、イザナは再び群衆の中に目を向けた。
「(疲れて動けなくなった勇者チャンを攫って何処かに監禁しとくのも一つの手か…。この間は逃げられたからな。次は外側からしか開けられねぇ扉作って閉じ込めるか。)」
ジ…っとカノトを見つめる半間の瞳は微かな狂気が孕んでいる。
「頑張って逃げ切れよ勇者チャン。オレに捕まんねーように…さ。ま、無駄だと思うけどな♪」
"マイキーから奪う"
その目的だけは絶対に揺るがない半間はニヤニヤと笑いながらカノトを見ていた。
その後、意外な覚醒を遂げたアングリーの活躍により、灰谷兄弟は瞬殺され、続けて千冬を相手にしていたモッチーまでも殴り付け、最後はムーチョを足で羽交い締めにし、極悪の世代を全滅させた。
「(嘘…アングリーくん強い。あの"極悪の世代"と恐れられた灰谷兄弟と望月莞爾を一人で片付けた。アングリーくん泣いてるけど…泣いたら強くなるタイプなの?)」
ブチ切れ顔の優しい天使の豹変に戸惑いを隠せず、驚いた表情を浮かべた。そしてカノトはやっとの思いでタケミチと千冬と合流することができた。
「二人とも!」
「カノト!」
「オマエその顔!?大丈夫かよ!?」
「平気」
「平気って…赤く腫れ上がってんじゃん!」
「終わったら湿布でも貼るよ」
「そうじゃなくて…マイキー君がガチギレするやつじゃん」
「顔は特に気を付けてたんだけどね…」
「女の顔をアイツら…」
千冬が怒って天竺の連中を見る。カノトはそんな千冬を諭すように宥めた。
「仕方ないよ。今の僕は男装中だからね。それに抗争中、全く怪我をしないって言うのも無理な話。だから千冬くん、大丈夫だよ」
「…帰ったら絶対手当しろよ」
「うん」
.