第1章 タイムリープ
「長ぇー夢見てるだけかもしれねー…けどさ、きっと…神様が最後にもう一度、橘に会わせてくれたんだ」
「そっか…神様が叶えてくれたんだね。じゃあ僕も…兄さんに会えたのは神様のおかげってわけだ」
「マドカさんに会えたのか?」
「うん…ここは兄さんのいる世界だ。僕が唯一、望んだ世界。それを今、体験してる」
「そっか、オマエも会えたんだな。一番大切な人に」
「え?どーゆー事ですか?」
「12年後の7月1日、オマエの姉ちゃんは死ぬ。そん時にオマエも一緒に死ぬんだ」
「僕の兄も12年後に死んじゃうんだ。僕の誕生日の前日にね」
二人の話にナオトは驚いて目を見張る。
「“2017年7月1日”!この日を覚えとけナオト!!そんで姉ちゃんを守ってくれ!!」
「大変かもだけどよろしくね、ナオトくん」
「なんてな、信じられるわけねーかこんな話。でも頼むよ」
タケミチは手を差し出す。
「運命を変えて」
カノトは真っ直ぐにナオトの目を見て言う。
「………、うん…わかった」
ナオトがタケミチと握手を交わした瞬間、鈴の音が聞こえ、カノトは意識を手放した。
✤ ✤ ✤
2017年───東京。
「……………」
目を開けると天井が映った。
「君も気づいたか!?」
「ここは…」
「駅の医務室だよ」
「(いつの間にか意識が飛んでた…)」
起き上がって隣を見るとタケミチも目を覚ましていた。
「彼が駅のホームに落ちた時、君もその近くで倒れていたんだよ」
「え?線路に落ちたって…」
ハッとしてカレンダーを見る。その日付は2017年の7月4日だった。
「…格好も元に戻ってる」
「気を失っていた君を女性駅員がここまで運んだんだ」
「(さっきのはやっぱり夢…?)」
「少し三人で話をさせてもらってもいいですか?」
「あっ、どうぞどうぞ。彼が君を救ってくれたんですよ!」
「へ?」
視界に入らなくて気付かなかったが、そこには知らない男性がいた。彼の頼みに駅員が医務室を出て行く。
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