第1章 タイムリープ
「あの…どこかで会った事、あります?」
「橘ナオトです」
「……え?」
「橘…ナオト…?」
その男性は確かに橘ナオトと名乗った。
「2005年の7月4日。ボクの運命を君が変えた」
「え!?あれは…現実?」
「だって貴方は死んだハズじゃ…」
「君たちはタイムリープしたんです!!」
「(タイムリープ…!!)」
「そしてボクは生き永らえて、タケミチ君を助けた。タケミチ君たちはタイムリープした事で未来を変えたんです!!」
興奮気味に話すナオトの衝撃的な発言に二人は驚いた顔を見せる。
「タケミチ君…12年前の今日、君はボクにこう言いました」
“姉ちゃんを守ってくれ”
「ボクは必死に勉強して“刑事”になりました」
「刑事!!」
「姉を守るために」
「じゃ…じゃあ橘は!!」
「……………」
「ナオトくん?」
「すみませんタケミチ君。姉は死にました」
ナオトは悔しげに顔をしかめる。
「…兄さん、は?」
「…宮村望さん。彼も…残念ですが…」
「そんな…どうして…」
カノはショックで顔を俯かせる。
「未来は…変わらなかった…?」
「……………」
椅子に座り、ナオトは二人に言った。
「考えられる手は全て尽くしたんです。でも…でも!!」
「(兄さんが…また私の前から…)」
「ボクに協力してください!!君なら!姉さんを救える!!!」
「オレが…橘を…?」
そして今度はカノに向き合う。
「カノさん、貴女にも協力をお願いしたいです」
「私…?」
「もしかしたらお兄さんを助けられるかもしれない!!」
「!!」
「失礼だと思ったのですが、貴女の事を調べさせて頂きました。貴女は最愛のお兄さんを、東京卍會の抗争で亡くしている」
「……………」
「未来を変えたくはありませんか?」
「未来を…?」
「お兄さんのいる世界を…取り戻しませんか?」
虚ろだったカノの瞳に光が戻る。答えは───とっくに決まっていた。
.