第46章 東卍vs.天竺
「でもその度に周りから力を貰うんです。諦めない強さと頑張る事の勇気を。だから私はどんな危機に立たされても、今まで諦めずに頑張って来られたんです」
マドカやマイキー、タケミチやナオト、いろんな人達に背中を押され、今の自分がいる。そして、それを糧にして、ここまで来れた。
「エマちゃんを亡くして、辛いのは分かります。でもそこで立ち止まってしまたら…ずっと前に進めないんです。万次郎くんの歩みは…"今日"で永遠に止まったままです」
悲しそうに瞳を揺らし、マイキーを見上げる。生気を無くしたマイキーにカノトの想いが届いているのかは分からない。まるで今のマイキーは昔の自分を見ているようだと思いながら、ギュッと握る手に力を込める。
「それじゃあダメなんです。万次郎くんが自分から一歩踏み出さない限り、貴方の心はずっと"そこ"に囚われたままなんですよ。だから…エマちゃんの為にも…前を向いて歩き出してください」
「……………」
「私は天竺と戦います。諦められない理由があるから。万次郎くん、心に負った深い傷は、そんなに簡単には治りません。でも貴方ならきっと…立ち直れるって信じてます」
それだけ伝えると手を離し、スッと立ち上がる。戦意喪失状態のマイキーを見るのは痛々しかった。それでもマイキーなら必ず立ち直れると信じ、最後にもう一度だけ、言葉を掛ける。
「じゃあ…行ってきます」
俯いたマイキーにそう言い、カノトはその場を立ち去った。
◇◆◇
武蔵神社────。
「聞いてくれみんな!」
「……………」
「ついさっき総長の妹が事故で亡くなった」
その衝撃の事実に、東卍メンバーが驚きを隠せず、戸惑う声が四方八方から聞こえる。
「マイキー君の妹が!?」
「マジかよ」
「…総長は無事なのか?」
「総長は当然、今日の天竺戦には参加できない。副総長もだ…」
「え…?どうすんだよ…?」
「トップ二人がいねぇんじゃ…抗争なんて無理じゃね?」
総長は疎か、副総長まで不在と聞き、みんなが一気に不安に陥る。
「そうだな。王のいねぇ軍隊は烏合の衆…100%負ける」
「……………」
「今日戦うべきじゃない」
イヌピーの言葉にみんなが賛同する。
.