第46章 東卍vs.天竺
阿佐ヶ谷病院───。
「(…終わった。未来は…変わらない。闇堕ちした万次郎くんを救う事も、兄さんがいる世界を取り戻す事も…出来なくなった。全部…消えちゃった。)」
"みんなが笑って暮らせる幸せな世界にしたい"──初詣の時に書いた絵馬の願い事。現代(みらい)が変われば、その願いは叶うと思ってた。
けれど、過去でエマは命を落とし、最愛の妹を失ったマイキーの心は壊れ、闇堕ちに繋がるキッカケを与えてしまった事で、タケミチやカノトが望んだ未来は…消えてしまった。
「(万次郎くん…目が覚めた後も、私のことが視界に入っていないみたいに、先に一人で中に戻って行ったな…。)」
顔中傷だらけの状態で生気を無くしたマイキーはフラフラになりながらも、病院の中に戻って行った。
「……………」
希望は完全に閉ざされた。マイキーの闇堕ちを防がない限り、『最悪な未来』は何度も続いていく。
「(またあんな窮屈な世界で生きるの?そんなの…耐えられない──!)」
泣きそうになるのをグッと堪え、震える手をギュッと握り締める。
「(ダメ…ここで挫けちゃ。頑張る事を諦めちゃダメ。怖くても…前に進まなきゃ。未来を変えるって、誓ったんだから。)」
そう自分に言い聞かせ、挫けそうになる心を何とか奮い立たせる。そして病院の中に戻ると、タケミチが長椅子に座り、ボロボロの姿で顔を俯かせるマイキーの前に立っていた。
「…マイキー君。こんな時にこんな話…不謹慎かもしれないですけど、今日は天竺との決戦です。みんな…マイキー君の号令がないと動けません」
「……………」
「マイキー君。エマちゃんを…殺したのは…稀咲です!」
「……………」
悔しげに涙を浮かべるタケミチは体を震わせ、エマを殺した稀咲に怒りを覚えた。だが抜け殻のように茫然としているマイキーに今のタケミチの言葉は届いておらず、ずっと床を見つめたまま、黙り込んでいる。
「アイツの事だから悪知恵働かして、絶ッ対ェ捕まりません。マイキー君…オレは一人でも天竺とやります」
「……………」
「(オレだけでも…前に…進まないと…)」
マイキーから離れたタケミチがこちらに向かって歩いて来る。ふと視線が合わさり、カノトはこう言った。
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