第45章 願う声は届かない
「エマ…ちゃん?」
「エマっ…エマ!?あのさっ、『秘密にする』ってケンチンと約束したけど…ケンチン、オマエの事、好きなんだぜ。両想いなんだ」
エマの身体から力が抜けたことでマイキーに掛かる体重が重くなる。それがどういう事を意味するのか知っているマイキーは焦るようにエマに声を掛けた。
「だから病院着いたらすぐケンチン呼ぶから。な?エマ!エマ…?」
「……………」
「………、カノ……」
「…はい」
「オレの上着…エマにかけてやってくれ」
「っ…………」
「エマがなんか…冷てぇんだ…」
背中から伝わる体温を失ったエマの身体。震える声でマイキーに言われたカノトは辛そうに眉を寄せ、目を瞑り、ゆっくりと開いて、手に抱えていた上着を冷たくなったエマの身体に掛けた。
「オレの夢は…いつかオマエに子供が生まれて、ケンチンは家を建てるんだ。結婚したばかりのオレとカノが遊びに行くと、ケンチンはオマエの事をほったらかして、酒飲みながらもう何度も話した昔話で盛り上がる」
「マイキー君…」
「夜中まで居座ってさ、そのうち三ツ谷とかタケミっちとか呼んじゃって、もうドンチャン騒ぎでさ、赤ちゃんが起きちゃって…オマエにオレは…ブチ切れられるんだ…」
『待ちなさいよマイキー!!』
『笑ってねぇでなんとかしろよケンチン!!』
『まーた始まった』
『おつまみ作ったけど運ぶの手伝ってー…って、エマちゃん!赤ちゃんぐずってる!もう万次郎くん!ダメじゃないですか!』
『オレだけのせいじゃねえー!!』
『カノに叱られてやんの』
『うっせ!カノ助けろ!』
『泣いてる赤ちゃんが先です』
『カノがオレより赤ちゃん優先する!オレだけの奥さんなのに…!!』
『マイキーは結婚してもカノにベタ甘だなー』
「オレらにも子供が生まれたらさ、お互いの赤ちゃん連れて、いろんな場所に出掛けて、たくさん写真撮るんだ。そんで成長した自分の子供にアルバム見せながら、この時はこんなことがあったって思い出話を語ってさ…」
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