第45章 願う声は届かない
「エマちゃん…エマちゃん…っ…私の声が少しでも届いているなら…目を醒まして…返事をして…お願い───っ!!!」
何度呼びかけてもエマは目を醒さない。泣き叫びながらエマの心臓に近い場所に手を置くと、彼女の鼓動は小さく、消えかけていた。
「エマ?」
そこにマイキーがやって来て、異変に気付く。
「ゴメン…マイキー君…オレ…」
「ひっく…うぁぁ…エマちゃん…ごめん…ごめんなさい…うぅ…どうしてこんな…っ」
エマの手を両手で握り締め、青ざめた顔で涙を流し続けるカノトの体は震えている。
「何があった?」
「バイクが突っ込んで来てエマちゃんが跳ねられました…」
「……は?」
「許さない…絶対に許さない…エマちゃんを…うぅ…エマちゃん…っ」
「き…稀咲に…」
「神様…神様お願い…エマちゃんを…助けてください…エマちゃんを助けて…っ」
「タケミっち!乗せて!」
片膝を地面につき、身を屈めたマイキーは両手を背中に回し、エマを自分の背中に乗せるようタケミチに言う。
「カノ、オレの上着持って」
「……………」
魂が抜けたようにぼんやりしていたカノトだったが、よろめきながらゆっくり立ち上がって、地面に置いてあるマイキーの上着を拾い、マイキーとタケミチと共にエマを病院まで連れて行く。
「安心しろエマ、もうすぐ病院だから」
「(エマちゃん…無事でいて。もっと…貴女とたくさん話がしたいの。今度は男装してる時じゃなくて、本当の姿で。)」
「……マイキー?」
「!エマちゃん!!?」
「(目を醒ました!)」
「…あれ?体が…動かない…」
「エマちゃん…っ」
「…そっか…ウチ、バイクに…」
意識を取り戻したエマは自分の身に起きた出来事を思い返す。マイキーは辛そうに小さく話すエマを心配させないようにと、焦りの色を隠し、幼少期の思い出を語り始める。
「覚えてるか?エマ。オマエが5歳の頃、オレの事追っかけて、ジャングルジムから落ちて足折ってさ。あの時以来だな、オマエをおんぶするの」
「………、ねぇ?」
「ん?」
「ウチにもしもの事があったら」
「バーカ、もしもの事なんてねぇよ」
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