第45章 願う声は届かない
「あ…あぁ…エマちゃん…」
上手く言葉を発することが出来ず、血の気が引いた青ざめた顔でエマに近寄り、苦しそうに目を閉じているエマを見て、体の力が抜けたカノトはドサッと膝から崩れ落ちる。
「エマちゃん…エマちゃん…」
「エマちゃん!!」
タケミチも側に駆け寄り、気を失っているエマの体を抱き起こした。
「エマ…ちゃん…お願い…目を…目を醒まして…君は死んじゃダメだ…万次郎くんが…心の支えを…失ってしまう…」
エマを見つめた紫の瞳は大きく見開かれ、そこから涙がポロポロと溢れ出す。
「エマちゃん…結婚式のスピーチ…引き受けてくれるって…私の…っ…幸せになるためのアイテムを…選んでくれるって…約束したばかりでしょう…?」
震える手で冷たくなっていくエマの手を握る。
「ねぇエマちゃん…っ!!」
私は馬鹿だ
ドラケンくんを救っても
羽宮くんを救っても
稀咲を東卍から追い出しても
柴大寿を救っても
結局何も変わらなかったのは、これだ。
「エマちゃん、目ぇ覚ましてよ。エマちゃん、過去で…こっちで死んじまったら救えないんだ……っ」
「死なないでエマちゃん!!お願い…っ…お願いだからぁ…!目を醒ましてよ…っ!!」
「エマちゃんっ!!!」
「私はっ!もう誰も死なせたくないの!大切な人を失いたくないの…!君はこんなところで死ぬべき人じゃない…!ドラケンくんを残していくなんて…絶対にダメ!!」
きっと殴打された頭の傷は深い
兄さんの時みたいに
打ち所が悪い
助からない……っ
「や…だ…やだ…エマちゃん…ひっく…お願い…お願い神様…っ、彼女を助けて…!エマちゃんの命を…守って…!!」
医師と違って看護師であるカノトは簡単な応急処置程度しかできない。これが医師であれば、なんらかの処置はできたはずだ。ただ神に祈る事しかできないカノトは、藁にもすがる思いで必死に祈り続けた。
「ごめん…ごめんエマちゃん…君を助けられなくて…君を助けるのは私の役目なのに…私はまた…目の前の命を、救えない…ッ!!」
兄さんの時も
ナオトくんの時も
何もできなかった
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