第45章 願う声は届かない
「全部カノトのおかげ。マイキーと出逢ってくれて、好きになってくれてありがとう」
「そんな…お礼を言うのはこっちだよ。マイキーくんと出会って、知らない世界を二人で見ることができた。思い出もたくさん増えた。これからもたくさんの"好き"をマイキーくんと一緒に分かち合っていきたい」
「いつまでも幸せな二人でいてよね!あ、結婚式のスピーチはウチに任せて!」
「は!?結婚式!?」
「二人の幸せな思い出をウチがみんなの前でこれでもかってくらい、盛大に披露するから!」
何をどう聞いたら結婚式の話に繋がるのか、理解に苦しむカノトが、何故かエマは胸を張っており、今から二人の結婚式を楽しみにしている様子だった。
「ちょ、ちょっと待って!話が突拍子過ぎて頭が追いつかないよ…!」
「え?だってアンタ達、結婚するんでしょ?」
「っ………!!」
「そうなのかカノト!?」
「や…その…あの…」
確かに結婚を前提に付き合ってるけど!!
でも改めて言われると恥ずかしいよ…!!
顔を真っ赤にして照れるカノトを他所に、エマの話は勝手に進んでいく。
「どうせならサムシングフォーを取り入れた結婚式にしよ!」
「サムシングフォー…?」
「タケミっち知らないの?」
「初めて聞いた」
「サムシングフォーはね、花嫁に幸せをもたらす"4つの物"だよ。結婚式にサムシングフォーのアイテムを取り入れると、一生幸せになれるって言われてるんだ」
「へぇー」
「でもエマちゃん、男の僕が花嫁っておかしくない?」
本当は女なのだが、エマには性別を偽っている為、一応"花嫁"という立場をやんわりと否定しておく。
「別にいいじゃん!だってカノト美人だし!それに男がサムシングフォーを身に付けても問題ないと思うし!」
「(随分とあっけらかんとしてるなぁ。)」
「ちなみに『4つの物』って?」
「まずは『サムシングオールド』。家族の絆や伝統を象徴するアイテムとして、祖母や母親から譲り受けた"何か古いもの"を身につけるんだ」
知らないタケミチの為にカノトとエマが分かりやすく説明してくれる。
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