第45章 願う声は届かない
「それと…二度とアイツに触れんな。オレの大事なモンを傷付けたら…殺す。」
「……………」
「誰にも奪わせねぇ。どこにもやらねぇ。オレの帰る場所を失くすんじゃねえよ。アイツが迷わないように手を繋いでくれてんのに、離れンだろうが。」
「(なるほどな…コイツやべぇわ。相当アイツに対する気持ちが重い。こんな奴のどこがいいんだよ、あの下僕。)」
怒りを孕んだ低い声で呟くマイキーの重さにドン引きしたイザナはげんなりした。
◇◆◇
「男の子ってなんで喧嘩ばっかりするのかな?」
「え?」
「"東京卍會総長"、"無敵のマイキー"。マイキーは人前で強い所しか見せない」
「!」
「兄貴が死んだ時も、場地が死んだ時も、どんな時でも弱い顔を見せないのがマイキー、誰にも」
「…たしかに、そうだね」
マイキーはいつだって強かった。8.3抗争の時も、血のハロウィンの時も、聖夜決戦の時ですらも、決して弱さは見せなかった。
それが総長としての立場からなのか、それとも男のプライドからなのかは分からないが、人前で弱音を吐いた事すらなかった。
「でもホントのホントは、今でも使い古したタオルケット握りしめてないと寝れない、弱い男の子。君やカノト、ウチと一緒。」
「エマちゃん…」
「だから、どっかで張りつめた糸が切れちゃった時、その時は、ウチが絶対にマイキーを助けてあげるんだ!マイキーがそうしてくれたみたいにね!」
「エマちゃんみたいな素敵な妹がいて、マイキーくんは幸せ者だね」
「言っとくけど!マイキーが弱い所を全部曝け出せるのってカノトの前だけなんだからね!」
「…そうなの?」
「そうなの?じゃないよ!カノトは自分がどれだけマイキーの心の支えになってるか知るべき!」
勢いよくビシッと指を指される。
「カノトと出会ってからのマイキー本当に変わったんだよ!カノトから毎朝届くおはようメールを嬉しそうに眺めてたり、カノトに会える日はずっとご機嫌だし、笑うことだって前よりたくさん増えた。なにより…幸せそうなマイキーを見ることが多くなった」
エマは嬉しそうな顔を浮かべる。
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