第45章 願う声は届かない
嫉妬と殺気が交じった冷たい眼がイザナに突き刺さる。不穏な空気にタケミチはハラハラとした顔で冷や汗を掻き、マイキーの登場にカノトはホッと安堵の笑みを浮かべた。
「……………」
眉をグッと顰め、険しい顔でこちらを睨み付けるマイキーを凝視めたまま、イザナはカノトの腕を離す。
「タケミっち、カノト。エマ連れて離れてろ!」
ピリついた空気が流れる中、マイキーにそう言われ、二人はエマを連れて少し離れた場所に移動した。
「(イザナが掴んだ腕、撃たれた方の腕だった…あの時の痛みなんてこっちの体じゃ感じないはずなのに、少しだけ痛む。)」
「腕、平気か?」
「うん、平気」
腕を擦っていたことに気付いたタケミチが心配そうな顔で聞いてきて、大したことないと笑った。
「…あの人がウチのもう一人のお兄ちゃん、"イザナ"だよね?」
施設で別れて以来、一度も会った事のなかったエマがマイキー達と話しているイザナを見て言った。
「今夜20時、横浜第7埠頭に東卍総動員で来い。天竺対東卍総決戦だ。全部終わらそーぜ?マイキー」
「……………」
「オレらが勝ったら、アイツはもらう」
「あ?」
"アイツ"が誰を指しているのかを知っているマイキーは片眉をピクッと跳ね上げ、怖い顔でイザナを見据える。
「オマエの傍に置いておくには勿体ねぇ。アイツはオマエから離れないつもりらしいが、勝っちまえばもうオマエのモンでもねーだろ」
首を少し傾けて笑うと、耳飾りがカランと音を立てた。そんなイザナの言葉にマイキーはスッと冷たい眼を宿す。
「…本気でオレからアイツを奪えると思ってんのか?」
「難しいコトじゃねえだろ?」
余程自信があるのか、イザナはマイキーからカノトを奪えると本気で思っているらしい。今まで誰一人として本気で、マイキーからカノトを奪えた者はいないというのに。
「テメェはアイツを安く見過ぎだ。カノはそんな単純な奴じゃねえよ。オレらの繋がりナメんな。簡単に堕とせると思ったら大間違いなんだよ」
イザナの煽りを跳ね返すように不敵に笑ったマイキーは再び怖い顔でイザナを見る。
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