第45章 願う声は届かない
「八戒!三ツ谷がやられてテンパるのはわかる。マイキーを見ろ!」
「!」
「笑ってるか?」
カノトもマイキーの方を見るが、彼は全く笑っていない。
「八戒、オマエは三ツ谷のそばについてろ」
「え!?ちょっと待ってください!オレはタカちゃんの仇を…」
「オレは三ツ谷たちの容体が心配なワケじゃねぇ。アイツら目ぇ覚ましたら絶ッ対ェこの抗争に参戦しようとする」
「!」
「それを止めてくれ。アイツらが心配でオレが動きづらくなる。タケミチ達はオマエらの任務を全うしろ」
「ハイ!」
「いいかオマエら、この戦い後ろに隊長は一人もいねぇ。俺だけでいい!」
自信に満ちた表情を浮かべるマイキーに安心感すら覚えた。彼がいれば東卍は負けない。"無敵"がいれば、天竺を倒せる。全員、そう思っていた。
「天竺潰すぞ!!」
「(私達には万次郎くんがいる。だから東卍は負けない。そう思うのに…何だろう、この胸騒ぎは。)」
周りが拳を突き上げて歓声に包まれる中、一人不安そうな顔を浮かべるカノトは、胸辺りの特服をギュッと握り締めた。
◇◆◇
2月22日───朝。
カノトはタケミチとイヌピーと共に真一郎の墓碑に両手を合わせていた。
「真一郎君、コイツが十一代目、黒龍総長、花垣武道です」
イヌピーに紹介されたタケミチは両手を腰の後ろで組み、バッと頭を下げる。
「初代の名に恥じない最っ高のチームを作ります!!!」
「真一郎さん、どうかこれからの黒龍とタケミチくんを見守ってあげてください。貴方が守り続けた黒龍は失わせません」
「黒龍創設の日に十一代目誕生か…」
第三者の声に顔を横に向けると、赤い詰襟の特服が視界に入る。カノトもイヌピーも驚いて目を見開いた。
「おもしれー」
花札の耳飾りがカランと音を立てて揺れる。
「オマエが花垣武道か!」
「(なんだ?コイツ。)」
「(黒川イザナ…!)」
「よぉカノト。相変わらずクソつまんねー顔して生きてんな」
「……………」
「今日はアイツは一緒じゃねーのか」
イザナの言う"アイツ"とはマイキーの事だ。カノトは嫌そうな顔を浮かべて言う。
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