第44章 つーかまーえた♪
マイキーが迎えに来るまで買った水で口をゆすぎ、いつの間にかペットボトルの中身は空になり、ゴミ箱に捨てた。
「(消えない。何度口を水でゆすいでも、アイツの感触が、消えてくれない──……)」
ゴシゴシと袖で乱暴に唇を拭う。抵抗できなかった。押さえつけられて、身動き一つさえ半間の力で封じられてしまった。これが男と女の力の差だ。カノトは悔しげに涙を潤ませ、半間に怒りをぶつけた。
すると近くで聞き慣れた排気音がし、すぐにマイキーのバブだと分かる。コンビニに着いたマイキーはカノトの姿を見つけると、その近くでバブを止め、エンジンを切った。
「こんな夜にイケメンが一人でいると知らない女に声掛けられてお持ち帰りされっかもよ」
さっきまでの怒っていた雰囲気はなく、冗談を言いながら歩み寄ってくるマイキー。
「迎えに来てくれて…ありがとうございます」
「いーよ、カノに会いたかったし…って、オマエ唇赤くなって切れてんじゃん!」
驚いたマイキーは頬を両手で包み込むと、カノトの顔を上げさせる。
「しかも血も少し出てるし!!どうしたんだよこれ!?」
「何でもないです…」
「はぁ?何でもなくねーだろ。何があった?もしかしてオマエが泣いた事と関係してんのか?」
図星を突かれ、視線を横に逸らす。
「何で逸らすんだよ。絶対なんかあったじゃん。なぁカノ、オレ、オマエに隠し事されんの嫌いって言ったよな?」
「……………」
「頼むから話して。そうじゃねぇと…いつまでもカノのこと抱きしめてやれねーし、ちゅーもできないんだけど?」
心配するような優しい声で囁かれ、頬を包み込まれたまま、こつんと額を合わせられる。
「カノのこと、ぎゅーって抱きしめて、ちゅーしたいなー」
「っ…………」
うるっと目頭が熱くなった。そしてスイッチが切れたようにカノトはポロポロと涙を流し始める。
「ごめっ…なさ…まんじろーく…っ…もう貴方とキス…できません…っ」
「は?」
突然のキスできない発言にマイキーは意味が分からないというような顔で困惑する。
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