第44章 つーかまーえた♪
「(まだ感触が消えない…。)」
タケミチ達と別れた後、近くのコンビニに立ち寄り、ペットボトルの飲料水を買い、横の駐車場で蓋を開け、水を口に含み、歯列にぶつけるようにぐちゅぐちゅと頬を左右に動かして排水溝に吐き出す。
「ほんと…最悪。」
蓋をキュッと閉め、唇に付着した水滴を手の甲でグッと拭い取り、不快に眉を顰めた時、携帯に着信が入り、相手を確認した。
「!」
その画面に映し出された名前を見て、罰が悪そうな顔を浮かべる。何度も見慣れた名前。電話が掛かってくる度に嬉しさを覚えた。でも今のこの電話は…少し居心地が悪い。
「(どうしよう…出ないと不審がるよね。)」
今朝の一件もあり、まだ気まずさが残っているが、出ないでいると余計に厄介なので、仕方なく電話に出ることにした。
「…もしもし」
《オレだけど…》
開口一番の声は明らかに落ち込んでいた。マイキーもきっと気にしていたのだ。それでもこうして電話を掛けてきたということは…。
「どうかしました?」
《朝は冷たく突き放した言い方してごめん…。別にオマエに怒ったんじゃねぇんだ。けどあの時のオマエの顔が…すごく悲しそうだったから、傷付けちまったと思って…。》
「……………」
《なぁ…顔見て謝りたい。今から会おう?》
「え…あー…今はちょっと…」
《家の前でもいいから。電話越しじゃオマエがどんな顔してんのか分かんねーし…やっぱり直接会ってちゃんと謝りたい。ダメ?》
「ダメじゃないですけど…」
《それともオレのこと嫌いになった?もう顔も見たくねえ?》
「それはないです。私が万次郎くんのこと嫌いになれないって知ってるくせに…」
《うん。だってカノ、オレのことめちゃくちゃ大好きだもんな。まぁオレもオマエ以上にカノのこと、めちゃくちゃ大好きで愛してんだけどさ。》
「照れるのでやめてください…」
《照れてんの見たいから会おうよ。》
「何ですかその理由…」
《カノに会いたい。オレ今、オマエ不足ですげー寂しい。だからオレのこと抱きしめて『大好き』って言ってほしい。》
半間とあんなことがあった為、正直マイキーと会うのは戸惑われる。彼に隠し通せる自信がなかった。
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