第44章 つーかまーえた♪
「すまねぇ花垣。オレ…どうかしてるな」
自分がおかしなことを言っている事に気付いたのか、イヌピーは謝罪の言葉を口にする。タケミチとカノトもシャッターを背にして、三人並んで座った。
「ここさ…元々、真一郎君のバイク屋だった場所なんだ」
「え?真一郎君って…マイキー君のお兄さんの?」
「ああ。オレらみたいな不良にとってさ、ここは集いの場だった」
「ここが?」
「見る影もねぇけどさ。その辺にキラッキラにかっけーバイクがずらーって並んでてさ、真一郎君はいっつも奥のあそこでバイクいじってて、訪ねてくる先輩たちもみんな、メッチャギラついててかっこよくてさ」
イヌピーは当時の事を思い出しながら懐かしむように語る。
「あぁでも…もう一人いたな。真一郎君がバイクいじってんの見ながらやけに妹の自慢話ばかりする人」
「え?」
それを聞いたカノトが思わずイヌピーを見る。
「その人、真一郎君の親友みたいでさ、不良でもねーのにメッチャ喧嘩強くて、オレらにもすげー良くしてくれて、真一郎君もその人が来るといつも嬉しそうな顔してた」
もしかして…と思ったカノトは、真一郎の親友である事と妹の自慢話ばかりする人物が、自分の兄を指しているのかを確認する為、イヌピーに聞いてみる事にした。
「その人…真一郎さんから"マドカ"って呼ばれてたりした?」
「え?あー…確かに"マドカ"って呼んでた。女みたいな名前だなって思ってたけど逆にその人の名前覚えやすかったから。でも何でその人の名前をオマエが知ってるんだ?」
青宗くんに女だってバレるのはまずい
ここは知り合いだって誤魔化すか…
「知り合いなんだ」
「そうだったのか」
「(案外あっさりと信じてくれた…。)」
「その人もオレらの世界では名の知れた人なのか、みんな真一郎君とその人の前では礼儀正しかった。"マドカさん"って人は、自分が慕われるのが嫌なのか、微妙な顔してたけどな」
「(兄さんそういうの面倒くさがるもんな。)」
「真一郎君はオレのヒーローだった」
「…イヌピー君が黒龍にこだわるのって…もしかして…」
「真一郎君の創った初代黒龍を再興させたい」
「!」
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