第44章 つーかまーえた♪
「……………」
「あの…青宗くん。そんなに見られると…やりづらいんだけど…」
「別に見てるだけだろ」
「(それが困るんだよ…)」
「嫌か?じっと見られるの。」
「別に嫌ではないけど…ちょっと恥ずかしいかなーって…」
「!」
恥ずかしさに耐えきれず、助けを求めてタケミチの方に視線を向けるが、彼はココとイヌピーのアジトに興味があるのか、二人の事は気にせずキョロキョロと辺りを見回している。
「その顔…いいな…」
「え?」
小さくて聞き取れず、顔を上げると、案外近い距離にイヌピーの顔があり、驚いて息を呑む。
「っ…………」
「今度は驚いて固まった。コロコロ表情が変わっておもしれぇ」
「!!」
目を細め、ふと表情を和らげて笑うイヌピーにどういう顔をしたらいいのか分からず、視線を彷徨わせる。
「(一くんを連れ戻したら、あの時と同じ質問を青宗くんに聞いてみようかな。)」
『ねぇ青宗くん』
『貴方は今、幸せ?』
「(とても幸せそうに見えなかった未来の青宗くん。だからこそ、あの時とは違う答えが返ってくるといいな。今度は一くんにも聞いてみよう。)」
湿布を貼り終わり、イヌピーを見る。
「はい、おしまい」
「…ありがとな」
「どういたしまして」
にこりと笑って救急箱の蓋を閉じる。
「……………」
イヌピーは何か言いたそうにしていて、一点を見つめながら口を開いた。
「オレはある目的の為に黒龍を再興させたいと思ってる」
「「!!」」
「ココは…アイツはそんなオレの為にずっとついてきてくれて、なんの取り柄もねぇオレの為に、ずっと支えてくれた。ココの為ならオレは死んでもいい…」
そしてイヌピーはタケミチに向けて正座をし、頭を下げる。
「オレはオマエに命を預ける。黒龍を背負ってくれ、花垣…十一代目黒龍総長を継いでくれ!!!」
「え!?」
「花垣…ココを、オレたちを救ってくれ…」
顔を上げたイヌピーの目から涙が流れていた。タケミチもカノトも驚いて固まる。
「(タケミチくんが…黒龍の総長に?)」
するとイヌピーはシャッターに背を預け、"ふー"と小さく息を吐いた。
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