第44章 つーかまーえた♪
廃墟みたいな場所に着いたカノトは、扉を開け、恐る恐る中に足を踏み入れる。
「っ!?タケミチくん!!それに青宗くんも!!」
目に飛び込んできたのは、顔や体に酷い怪我を負った、ボロボロの二人だった。頬には湿布も貼っており、その姿が逆に痛々しく見える。
「どうしたのその怪我!?何があったの!?」
「…さっきまでムーチョ君に拉致られてた」
「え?ムーチョって…伍番隊の隊長?その人が二人をこんな目に遭わせたの!?でも東卍って内輪揉めは禁止のはずだよね?」
「伍番隊は東卍の中でも特別枠、唯一内輪揉めを許されてる"特務隊"らしいんだ」
「…特務隊?」
「簡単に言えば東卍の"風紀委員"だ。伍番隊は東卍の裏切り者を総長の合意なしで罰する事ができる」
「そんな隊があるんだ…」
「ムーチョがオレらを拉致った目的は…花垣に"ある疑い"が掛けられたからだ」
「ある疑い?」
イヌピーの意味ありげな言葉にカノトは首を傾げる。
「オレは昔…イザナの側近だった」
「え!?イザナの!?」
「オレが使える奴だからイザナは側に置いていた。そのイザナの側近だったオレが壱番隊にいる」
「!」
「壱番隊は東卍の"裏切り者(ユダ)"、天竺の犬(スパイ)。その首謀者はオレらを引き入れた花垣武道」
「そんな…!タケミチくんは"裏切り者(ユダ)"でもないし、壱番隊は天竺の犬(スパイ)でもないよ!」
「あぁ、コイツは"裏切り者(ユダ)"じゃねぇ。コイツは東卍を裏切るような真似はしてねぇ」
「…当たり前だよ。ムーチョは東卍の裏切り者を罰する為に二人を拉致したの?」
「──オレ達も最初はそう思ってた。二人を壱番隊に引き入れた首謀者(オレ)を罰する為に拉致したんだって」
「その口ぶりだと…ムーチョはタケミチくんを罰する事が目的じゃなかったんだね?」
「……………」
そこで二人は黙り込んでしまう。どうしたのかと不思議に思っていれば、先程タケミチが発した言葉の中に引っ掛かりを覚える部分があって、カノトはハッとした様子で二人を見た。
「壱番隊に引き入れたのって…青宗くんと…一くんだよね?…彼は今ドコにいるの?何で此処にいないの…?」
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