第44章 つーかまーえた♪
「すぐ戻るからちょっと待っててな、勇者チャン」
「……………」
「逃げたりしたら───」
「!」
「また追いかけて捕まえて、今度は外に出さねーように監禁するからそのつもりでな♥」
「っ…………」
ニコリと笑いながら脅しの言葉を吐き、カノトの上から退いてベッドを下りた半間は首に手を遣り、面倒くさそうな顔で部屋を出て行った。
「……………」
ゆっくりと上体を起こし、半間に強引に口付けされた唇の感触を消すように、服の袖でゴシゴシと擦る。
「(最悪…今すぐ水でゆすぎたい。アイツ…万次郎くんとのキスを上書きするように何度も舌を絡めて…無理やりして…)」
体の震えは止まったが、嫌悪感が治まらず、眉を顰めた険しい顔で、半間に対しての怒りを募らせた。
「(早く…此処から逃げないと。)」
ベッドから下りて、半間が出て行ったドアとは別の、もう一つのドアから逃げようと思い、ドアノブを回せば、鍵は掛かってなかった。
「(この建物の構造が分からない。天竺の隠れ家だって言ってたけど…見つからないように外に出なくちゃ。)」
誰に出くわすか分からない為、慎重に脱出を試みる。カノトは静かにドアを開け、部屋を出た。
✤ ✤ ✤
「(あっさりと逃げられた…。)」
天竺の連中と鉢合わせする事なく、無事にビルの外に逃げ出せたカノトは、半間の狂気から解放され、安堵の溜息を吐いた。
「(少しでも油断するとアイツの狂気に絡め取られる。だから警戒しないと。こっちが逃げ続けても、あの男は絶対に私を捕まえようとする。でも…私が君のモノになると思ったら大間違いだ。)」
ギュッと掌を握り締め、固く決意した時、ポケットにしまっていた携帯に着信が入り、相手を確認するとタケミチからだった。
「もしもし?」
《カノちゃん、今平気か?》
「うん、平気だよ。どうしたの?」
《会って話したい事がある。場所はメールで送るから今から来てくれねェか?》
「…わかった。今から向かうね。」
タケミチとの通話を終え、半間が逃げた自分を探しに来る前に、早々にこの場から離れ、タケミチがメールで送ってくれた場所へと急いだ。
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