第44章 つーかまーえた♪
「あっ……!?」
「これでもう動けねーだろ?」
「離せ!!」
「なぁ覚えてるか勇者チャン。俺と初めて会った日のこと。」
「知るわけないだろ!!」
「俺は鮮明に覚えてる。勇者チャンと出逢ったあの日から…俺の世界が変わったんだ。勇者チャンと過ごした時間は退屈じゃなかった。勇者チャンと話した内容は一語一句忘れずに全部覚えてる。勇者チャンの笑顔も、勇者チャンが俺に掛けてくれた言葉もな」
「適当なこと言うなよ!!君と出会ったのは8.3抗争の日だろ!?それ以前に僕は君に会った記憶がない!!」
「…何言ってんだよ勇者チャン。俺達の出逢いはもっと昔だろ?それに8.3抗争の日は"出逢い"じゃなく"再会"だったんだからな!」
「は……?」
半間の言葉に耳を疑う。カノトが半間に初めて会ったのは8.3抗争の日だ。武蔵神社で初めて愛美愛主で総長代理を務めていた半間修二に出会った。それなのに半間は8.3抗争よりもずっと昔にカノトに会っていると言う。
「さっきから…何を言ってる…?」
戸惑いながら半間を見ると、ニヤリと笑ったまま、カノトを見下ろして言った。
「なぁ勇者チャン──あの時の白猫は元気か?」
「え……?」
「助けた白猫。ガキ共に虐められてたろ。でも勇者チャンが助けたおかげであの白猫は死なずに済んだ。そうだったよな?」
「……………」
言葉を失い、動揺した。小さい頃に怪我をした白猫を助けた。でもそれは自分とマドカ、そしてもう一人の少年しか知らないはず。何故半間がそのことを知っているのだろう…とカノトは驚きを隠せずにいた。
「あの時の勇者チャン、ビビりながらもアイツらに立ち向かっていく姿なんかマジでやばかったわ。しかも普通ナイフ持ってる相手に丸腰で挑むか?刺されて死ぬかも知れねぇのに、マジで度胸あんなと思ったなァ」
「(まさか…)」
「その瞬間なんだよな、俺が勇者チャンに堕ちたの。なんかこう…頭のてっぺんから足の爪先まで一気に電流が走ってさ、その時点で勇者チャンしか目に入らなくなった」
「(半間が…あの時の男の子…?)」
「初めて恋に落ちる瞬間って、ホント突然だよなァ」
半間は可笑しそうに笑う。
.