第44章 つーかまーえた♪
「(確か家に帰ろうと来た道を引き返してる途中、誰かに後ろから身体を押さえ付けられて、ハンカチで口と鼻を覆われて…クロロホルムを嗅がされたせいで気絶したんだ。)」
自分の身に起きた事を理解すると、苛立ちで顔をぐっと歪め、小さく舌打ちをする。
「(やっぱり拉致されたんだな。くそ…油断した。まさか待ち伏せされてたなんて。もしかしてずっと付けられてた…?)」
自分が気付かない内に見知らぬ誰かに尾行され、まんまと罠に嵌ったというわけだ。カノトは警戒心の薄さに自分を嘲笑う。
「(前にも万次郎くんに注意されたな。"危機感持て"って。ハァ…私の失態だ。)」
溜息を零し、肩を落として落ち込む。
「(誰が何の目的で私を拉致した?もし此処が天竺のアジトとか隠れ家だったら…さすがに私一人じゃ勝てない…。)」
"ひとまず此処を出なきゃ"
そう思ってベッドから下りようとした時、二つある内の一つのドアがキィィィ…とゆっくり開き、ビクッと身体を跳ねさせたカノトは警戒心を張り巡らせる。
「お?もう目が醒めたんだな〜」
「え……?」
暢気な声で現れた人物を見た途端、カノトは驚きで目を見開き、固まる。
「な…何で…君がここに…」
「久しぶりだな──勇者チャン♪」
「(半間修二……!!?)」
首を手を当てた半間はニヤリと笑い、衝撃を受けたように固まるカノトを見る。
「気分はどォだ?」
「……………」
「俺は最高に気分が良い。なんたって勇者チャンが俺の前にいるんだからな!」
「(君の気分なんて聞いてない!ちょっと待ってよ…本当に何で半間がいるの?)」
「"何で俺が此処にいるのか"って顔だなァ。まぁ俺が勇者チャンを此処に連れて来た本人なんだけどな♪」
「!…そうか、君が僕を襲ったんだな。どうして僕を此処に連れて来た?一体何が目的だ!?」
「"君"なんて呼び方は好きじゃねぇな。俺の下の名前、知ってるだろォ?」
「君の名前なんか知るか!いいから僕を拉致した目的を言え!」
「うわ…マジかよ勇者チャン。俺の名前、ちゃあんと覚えろよって言ったのに。ショックで気絶しそー」
「ふざけるのもいい加減にしろ!」
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