第44章 つーかまーえた♪
「(あの時の白猫さんと再会するなんて驚いた。怪我も早く治るといいな。またどこかで会えたら…それはもう運命だよね。)」
白猫と別れて公園を後にし、来た道を引き返して、今度こそ家に帰ろうとした時──……
ガッ
「んぐっ!?」
突然後ろから口と鼻を覆うようにハンカチを押し当てられ、驚いたカノトは必死に抵抗する。
「(離して!!)」
助けを呼びたくても声が出せない状況の為、何とか手足をばたつかせて脱出を試みるも、相手に首をがっちりホールドされており、身動きが取れなかった。
「(何!?誰なの!?)」
振り向いて相手を確認する事ができない。首に回った相手の腕を両手で掴み、引き剥がそうとするが、ビクともしない。
「う"ぅ"う"〜〜!!」
息も苦しくなった頃、ツンとしたキツい薬品の臭いが鼻の奥まで刺激し、目を見張ったカノトは焦った表情を浮かべる。
「(この臭い…クロロホルム!?まさかコイツ、私を眠らせて何処かに拉致る気!?)」
クロロホルムを嗅がされた事で、意識が朦朧とし始め、抵抗する力も奪われ始める。
「ん"ん"〜!!」
まずい…意識が…
「(助けて──万次郎くん…。)」
その願いも虚しく、意識がプツリと途切れ、カノトは気を失った。相手は完全に堕ちたカノトを確認すると、押し当てたままのハンカチを外し、ニヤリと笑った…。
◇◆◇
「ん……」
ベッドの上で目を醒ましたカノトが最初に視界に捉えたのは───壁一面がコンクリートで囲まれた、見覚えのない部屋だった。
「あれ…私…どうして…」
まだ覚醒しない頭で上体を起こす。
「ここは…どこ?」
周囲を見回すと、家具はベッドだけと云う寂しげに包まれた無機質な部屋で、窓がない代わりに、何故かドアが二つもあった。
「頭が痛い…」
ズキズキと痛む頭を片手で押さえ、微かに顔を歪める。まだ混乱していたが、何故自分がこんな薄暗い場所にいるのかを思い出す為、気を失う前の自分の行動について冷静に記憶を手繰り寄せることにした。
.