第44章 つーかまーえた♪
「ふざけてはねぇんだけどなァ」
「僕の質問に答えろ。此処は何処だ。どうして僕を拉致した。目的は一体なんだ。」
「睨んだ顔も綺麗だなぁ。"そっちの格好"してても勇者チャンが美人なのは変わらずか」
「半間…僕の話を聞いているか」
「聞いてる聞いてる。えーと…何だっけ?この場所と勇者チャンを拉致した目的?」
「……………」
「此処は天竺の幹部共がたまに使ってるビルの一部屋。ほとんど出払ってるけどな。」
「(やっぱり天竺の隠れ家…!)」
「此処に勇者チャンを拉致した目的は…俺が勇者チャンとお話したかったから♪」
「は?」
緊張感を崩すように半間は声を楽しげに弾ませて答えた。それを聞き、素っ頓狂な声を出したカノトの反応を見て、笑う半間。
「僕と話…?そんなことの為にわざわざクロロホルムで気絶させて、こんな場所に連れて来たのか…?」
「あぁ。だって普通に誘っても勇者チャン、ぜってー俺の誘い断ンじゃん。素直に頷いてくれると思わなかったし、こうして気絶させて拉致したってワケ♪」
「は…犯罪者!!誘拐魔!!」
「ばは♥めっちゃ罵るじゃん♪でも…こうでもしねーと勇者チャン、俺に会ってくんねぇだろ?」
「!」
「いつも勇者チャンの周りにはマイキーや東卍の誰かがいるからな。近付きたくても俺を阻む連中がいる。だから勇者チャンが一人になる時を狙ったんだ」
半間がゆっくりと足を進め、ベッドにいるカノトに歩み寄って来る。
「会いたかったぜ、勇者チャン」
「僕を此処から出せ」
ピタッと半間は歩みを止める。
「"此処から出せ"?」
不穏な空気が流れ始め、低い声でぽつりと呟いた半間の瞳に狂気が孕んだのを、カノトは見逃さなかった。
「何で出す必要がある?勇者チャンはもう此処から出さねぇよ?」
「!」
「だってもう…俺に捕まっちまっただろ?」
不気味にほくそ笑んだ半間の表情に怖さを感じ、心臓の鼓動がドクンと大きく跳ねた。
「あの日から漸く…勇者チャンを手に入れることができた。ずっとずっと…願ってた。勇者チャンが俺の傍にいてくれることを…。」
「こっちに来るな!」
近付いてくる半間に声を張って叫ぶ。
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