第43章 執着は時として狂愛に
でもこれでもう、大事な妹を脅かす存在はない。そう思ったマドカは安心していた。
その行為が…少年の歪んだ心を、更に深めてしまうとも知らずに…。
「また今日も来ない。昨日は雨だったから来なかったのも仕方ねぇって納得すっけど…今日は晴れてんじゃん。来るはずだろ…?」
あれから毎日、ずっとずっと、カノが公園に現れる事を待ち続けている少年。何時間もの間、いつも通りにベンチに座り、退屈そうに空を仰ぐ。
頭の中はもう、カノのことでいっぱいだった。それ以外に考える意味などないと云うように、カノの笑顔が一日中浮かぶ。
自分だけに笑ってくれて、自分だけを映してくれて、自分だけを好きになってくれる───だから会いに来ないはずがない。
少年はそう思っていた。
「(何で会いに来ない?ずっと待ってんのに。まさか俺と会うのが嫌になったか?いや…それはありえねぇ。勇者チャンは俺と会うのが楽しみだったはずだ。それなのに…)」
少年の狂った愛は、どんどん歪み始める。そして苛立ったように小さく舌打ちをした。
「(或いは…あの兄貴に邪魔されたか。チッ…俺と勇者チャンの仲を壊そうとしやがって。俺と勇者チャンが結ばれるのは運命なんだから、今更引き離してもムダだっつーの。)」
"だから───…奪い返す"
「(アイツが勇者チャンを奪った。俺の勇者チャンを、連れて行った。…逃げられたとか思うなよ。早く勇者チャンをアイツから引き剥がして、俺が守ってやんねーと。)」
少年は不気味にニヤリと笑う。
「勇者チャンの家ってどこだ…。あの時、兄貴はあっちから来たな。確かあの辺はマンションがたくさん建ってた。前に"オートロック付きのマンションだから泥棒は簡単に入れない"って言ってたか…」
壊れたようにブツブツと独り言る少年の視線はさっきからずっと、カノのマンションがあるであろう方へと向けられている。
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