第43章 執着は時として狂愛に
「よろしくね、×××くん!」
「よろしくなァ、勇者チャン♥」
"新しい友達ができた"と喜ぶカノと、"狂おしいほど好きな相手に出会えた"と喜ぶ少年。少年の本当の心情など、カノが気付くはずもなかった…。
それから二人は公園で会っては、他愛ない話をするだけの関係になった。主にカノが喋り続け、それに少年が相槌を打つだけの微妙な関係だったが…それでも少年は幸せだった。好きな子が自分に笑いかけてくれてる。今この瞬間、自分だけのモノでいてくれてる。それがとても嬉しかった。
だがその関係が数ヶ月続いたある日…
パッタリとカノが、公園に現れなくなった。
「…今日も来ねぇ。なぁ勇者チャン、俺、ここにお前が来るのずっと待ってんだけど。何で会いに来てくんねーの?」
いつものベンチに座り、何の面白味もない空を退屈そうに見上げている少年。
"何故突然、カノが少年に会いに来なくなったのか"
その原因は…マドカだった。
あの日、帰りの遅いカノを心配して探しに公園までやって来たマドカは、少年の存在に気付いた。そして初めて少年を見た時、体が震えるほどの不気味さを感じていた。
自分が男と話している時も、カノと話している時も、少年の顔はずっとカノの方に向けられており、その眼は、マドカから見ても異常だと分かるほど、狂気と執着心で歪んでいた。
"あれはカノを捕まえる気だ"
瞬時にそう察したマドカは、少年に危機感を覚え、このままだと大事な妹を何処かに連れ去られるかも知れないと思い、上手い理由をつけて、カノを少年から引き離していた。
"お互いに存在を忘れてもらおう"
"あの男はカノを不幸にする"
"絶対に渡してたまるか"
何よりも妹の幸せを願い、誰よりも妹の笑顔を大切に守ってきたマドカ。そんな妹を不幸にする男が現れた。幸せを壊し、笑顔を消し、泣かせる最低な男。少年にはそんな気配があった。最愛の妹を溺愛するマドカにとって、少年は、この世で一番大嫌いなタイプだった。
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