第43章 執着は時として狂愛に
「オートロック付き…そこを調べて虱潰しに探し当てれば、勇者チャンに会える。ヒャハ…ハハ…!待っててな、勇者チャン。すぐに俺が会いに行って、勇者チャンを不幸にする邪魔者は消してやるから」
完全にイカれている少年は高笑いをし、愉しげにニヤリとほくそ笑んだ。そしてすぐにカノが住んでいるマンションを虱潰しに探し出す少年。
だが数日掛けて探し続けても結局見つける事は出来ず、それなら通学路で待ち伏せしてカノに会おうと考えた少年だったが、そうなることを先読みしていたのか、マドカが通学ルートを変えていた為、少年は二度とカノに会う事はなかった。
✤ ✤ ✤
カノトはあの時の子猫が、成長した白猫だと分かり、驚いた顔で膝の上で丸くなっている白猫を見下ろす。
「もしかして…あの時の白猫さんなの?」
「にゃー」
それに答えるように、白猫は鳴いた。
「そっか、こんなに大きくなったんだね。あれからお母さんとは会えた?」
「にゃー」
「良かった。でも偶然って凄いね。あれから何年も経ってるのに、キミには私があの時の女の子だって気付いたんだね」
優しく白猫の体を撫でる。
「また会えたね」
「にゃあ」
「ふふ、うん、私も会いたかったよ。それにしても…今の今まで忘れてたけど、あの時助けてくれた男の子、元気でやってるかな。もう顔も名前も思い出せないけど…」
"どこかで元気にやってるといいな"と思い、ハンカチを白猫の怪我した前足に巻き付け、膝から白猫を下ろす。
「せっかく会えたのにごめんね。そろそろ行かなきゃ」
地面に下ろされた白猫は尻尾をゆらゆらと揺らしながら、カノトを見上げる。
「今度もいじめられないように気を付けるんだよ。最近物騒で怖いから。じゃあね。」
名残惜しそうに白猫の頭を撫で、公園を出た。白猫はそんなカノトの姿をじっと見つめ、地面に鼻先を近付け匂いを嗅ぐと、どこかに向かって走り出した。
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