第43章 執着は時として狂愛に
「お別れだね…白猫さん。お母さんと早く合流するんだよ。あと、あとはね…」
別れるのが辛くなり、泣きそうになっているカノの足元に子猫が擦り寄る。まるで"泣かないで"と慰めているようだった。
「っ…ちゃんと、元気でいてね!また会おうね!もう意地悪な奴らに捕まっちゃダメだよ!今度は…あなたともっと一緒にいたいな!」
「にゃあ」
「ばいばい…!」
泣くのをグッと堪え、別れの言葉を告げる。子猫はタタッと親猫の元へと走り去って行った。
寂しい気持ちのまま公園の前を通ると、ベンチに座り、つまらなさそうに空を見上げている少年がいた。
「昨日助けてくれた人!」
「よォ、『勇者チャン』」
こちらに気付いた少年の顔が一瞬、意味ありげにニヤリとほくそ笑んだ。
「勇者チャンって?」
カノは不思議そうに首を傾げる。
「お前のこと」
「私、勇者チャンって名前じゃないよ!宮村カノっていう素敵な名前があるの!」
「だってお前、アイツらにビビりながらも勇敢に立ち向かっただろ。本当は怖くて逃げ出したかったクセに、目だけは強気で、ぜってー諦めねぇって顔してたから親しみを込めて勇者チャン♪」
「う〜ん…勇者かぁ。あ!もしかして、剣で強敵をバンバン倒していく強い勇者ってこと!?」
「いや?剣も使えなくて、気合いだけで挑んで負け続ける方のクソ弱ぇ勇者♪」
「それ勇者って言わない…!」
小馬鹿にしたように笑う少年に、頬を膨らませて怒る。
「けど、それでも諦めずに勝ち続けるまで何度も強敵に立ち向かっていくカッケー勇者」
「!!」
「フハッ、この程度で喜ぶとか単純♪」
「それならいいよ!私、勇者になる!強くなってみんなを守れるカッコイイ勇者になる!だから勇者チャンって呼んでもいいよ!」
「まぁ気長にガンバレよ。今のお前はクソ弱ぇけど、いろんなモンを守れるようになれば、自ずと強くなんだろ」
「うん!私、兄さんみたいに強くなりたい!兄さんを守るために頑張るよ!」
「…そこでも兄貴の存在があんのかよ」
「?」
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