第43章 執着は時として狂愛に
少年と公園で別れた後、マドカに抱っこされたまま、マンションに向かうカノ。
「助けに行くのが遅くなって悪かったなカノ。怖かっただろ?」
「ううん、助けに来てくれてありがとう兄さん。本当はすごく怖かったけど…平気だったよ。白猫さんを守らなきゃって思ったら、自然と体が動いてたの。それにあの子も助けてくれたし!」
「……………」
マドカの脳裏に少年の顔が過ぎる。
「諦めなかったから、私も白猫さんも無事だったんだよ!ねー?」
同意を求めるかのように子猫に話し掛けるも、首を傾げられてしまう。
「そうか。本当によく頑張ったな。でもまた誰かに酷い目に遭わされたら大声で助けを呼ぶんだぞ。今日はたまたま俺が探しに行ったから良かったけど…カノに何かあったらマジで心配なんだよ」
「心配かけてごめんなさい兄さん…」
「次からは防犯ブザーでも持たせるか」
しょぼんと落ち込むカノの頭を優しく撫で、マドカは前を向き直る。
「帰って飯の支度しないとな。コンビニでミルクでも買って行くか。確か救急箱はリビングの棚にしまったはず…」
「ねぇ兄さん、白猫さんお家で飼えない…?」
「飼ってやりたいけど、その白猫さんを探してる親猫がいるかも知れないだろ?」
「あ…そっか。白猫さんにも…家族がいるんだね。今頃、探してるかなぁ…」
「その猫、公園にいたんだろ?もしかすると近くに親猫がいるかもな。明日、元いた場所に帰してあげるんだぞ」
「うん……」
その晩、弱っていた子猫を懸命に世話をし、同じベッドで眠りについたカノ。
翌日、子猫を元いた場所に帰す為、公園に向かって歩いていたが、その顔はどこか寂しそうだった。
「ご飯美味しかった?」
「にゃー」
「お風呂入ったから石鹸の匂いがするね」
「にゃー」
「もう怪我は平気?痛くない?」
「にゃー」
「そっか」
公園の近くまでやって来たカノは抱いていた子猫を地面に下ろす。
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