第43章 執着は時として狂愛に
「ンだと……!!」
「"5人"を軽くノした?それで喧嘩が強いアピールでもしてんのか?」
マドカは呆れ返ったような顔を浮かべた。男はギリッと歯を噛み締め、苛立ちを募らせている。
「俺の喧嘩は"ガキの喧嘩"とは訳が違ぇぞ。こっちはウゼェほど毎日不良共を相手に喧嘩してっからな。中坊(ガキ)が俺らの世界に足を踏み入れるのはお門違いってもんだぜ」
ニヤリと不敵に笑い、両手の指を組んでボキボキと鳴らすマドカ。男は悟った。"ホンモノの不良で、本気の喧嘩をしてきたことのある奴"だと。それを知った途端、先程までの威勢が嘘のように消え、恐怖で足がガクガクと震え、冷や汗が頬を伝った。
「アレ、お前の兄貴?」
「そうだよ!」
「強ぇの?」
「すっごく強いよ!だって兄さんは私を守る為に強くいるんだもん!」
「(あぁ…コイツの笑顔は兄貴のモノなのか。アイツが現れた時、すげー嬉しそうだったし。…………、邪魔だな。)」
"誰が"とは口にしなかったが、少年は面白くなさそうに小さく舌打ちをした。
「喧嘩慣れしてンだな。兄貴って、どっかのチームに入ってたりすんの?」
「チーム?入ってないと思う。でも他校の不良達が毎日喧嘩を売りに来る程、兄さんは強いよ!20人が学校に乗り込んで来た時には兄さん一人で全員やっつけちゃったの!」
「へぇ…相当強いんだな。下手すると本物の不良よりも強いんじゃね?」
「兄さんは不良じゃないけど、"そういう世界"?…の人達には一目置かれてるんだよ!あと兄さんは『皇帝』って呼ばれてるの!カッコイイでしょ!」
「『皇帝』ねぇ…」
男がマドカに向かって拳を振り翳す。だがマドカはそれを軽々と躱した。
「なぁ…俺とお前の兄貴、本気の喧嘩したら、どっちが勝つと思う?」
「兄さん!」
「即答かよ」
誇らしげに胸を張って答えたカノに、少年は面倒臭そうに溜息を吐く。
「だって兄さんは強いもん♪」
「俺の方が強ぇよ」
「そう言ってた不良達も、ことごとく兄さんに挑んでコテンパンにされちゃうんだよ」
「あんな雑魚と一緒にすんな」
「だって兄さんより強い人、見たことないもん」
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