第43章 執着は時として狂愛に
「いつもの時間になっても帰って来ねぇから心配して探しに来てみりゃあ…どういうことだろうなぁ。クソガキ共が可愛い妹を泣かせてやがる」
「か、勘違いすんなよ!そいつが最初に俺らに絡んで来たんだよ!」
「あ?テメェは馬鹿か?俺の妹がテメェらみたいなモブに絡むわけねーだろうが。もし最初に絡んだって言うなら…」
マドカの顔がカノに向けられ、冷たい表情と怒りの含んだ声を消し、優しそうに笑んで言う。
「何か理由があったんだよな?お前が意味もなくコイツらに絡むわけねぇもんな?」
カノは子猫に視線を落とし、そしてマドカを見る。
「コイツらが白猫さんを木の棒で突っついていじめてたの!あとね、汚いとか臭いって白猫さんの悪口言ってたんだよ!」
「嘘言うんじゃねえ!テメェが…」
「おい、まだ妹が喋ってんだろ。黙って聞け」
「っ!!」
「私、やめてって言ったんだよ!でもコイツらがもっと白猫さんをいじめようとするの!私、白猫さんを助けたくて…だから…」
「そうか。白猫さんを守って偉かったな。お前のおかげで白猫さんは助かった。さすが俺の妹だな」
「うん…!」
マドカに褒められ、嬉しそうに笑う。そしてマドカは笑みを消し、カノの後ろにいた少年に視線を遣った。
「そいつは?」
「私と白猫さんを助けてくれたの!」
振り返り、えへへっと笑う。少年は表情を変えず、冷たい眼をぶつけるマドカを恨めしげにじっと見つめ返している。
「(…不気味な奴だな。コイツがカノを助けたのか?人助けしそうな奴には見えねーけど…。つーか…俺のこと睨み過ぎじゃねえ?マジで薄気味悪ィな…。)」
不快そうに顔をしかめる。そして少年から視線を外し、再び男を見た。
「さてと…とりあえずテメェらには俺がお灸を据えてやらねェとな。」
「ハッ、テメェなんかにやられねーよ!俺はなぁ!上級生を相手に喧嘩したことだってあるんだぜ!しかも俺だけで軽く5人はノしてる!テメェみたいな奴、俺が瞬殺してやるよ!」
それを聞いて、思わず笑ってしまうマドカ。そして小馬鹿にしたような目で、憐れむように言った。
「そうかそうか、そりゃあ強ぇな。でも自慢する程の事じゃねーな」
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