第43章 執着は時として狂愛に
「ねぇ白猫さん。触ってもいい?私、あなたに酷いことしたりしないよ」
急に触る事はせず、まずは指を鼻先に近付ける。警戒心を張りながら、くんくんっと匂いを嗅ぐ白猫は、カノを見て鳴いた。
「にゃー」
「うん、ありがとう」
お許しが出た為、子猫の頭を優しく撫でた。
「ねぇお母さんはどこにいるの?もしかして迷子になっちゃったの?」
撫でられる手が気持ち良いのか、子猫は目を閉じたまま何も答えず、尻尾をゆらゆらと揺らしている。
「このまま一人ぼっちは可哀想…。あ、そうだ!あなたも一緒に母猫さん探そうよ!」
「ダリィからやだ♥」
「ガーン…!!」
ニコリと張り付けた笑みを浮かべる少年。その顔は明らかに"面倒臭い"と云うような色を滲み出している。
ショックを受けたカノは、しょぼんと落ち込んだ表情で弱々しく聞く。
「なんで…?」
「逆に何で俺が探すの手伝うと思った?そんなクソめんどくせーことやるわけねーじゃん」
「でも私一人じゃ探せない…」
「ほっとけよ」
「放っておけないよ!だって子猫なんだよ!カラスにいじめられたりしたら可哀想…!」
「……………」
「動物さんは大事にしろって言われたんだもん…」
うるうるした眼差しを向ければ、少年は首に手を遣り、面倒臭そうに溜息を吐いた。
「お前、相当なお節介だな」
「?」
「そんな弱い生き物、助けてどうすンだよ。無事に親猫と会わせてもまたすぐに危険に晒されるかもしんねーのに」
「弱いからって助けない理由にはならないよ」
「!」
「それに白猫さんなら逞しく生きていける気がする!だってコイツらに一人で戦ったんだもん!必死に威嚇して、こんなに小さいのに…諦めなかった。だから大丈夫!」
「意味わかんねー」
「う……」
「けど…まァ暇だし、一緒に探してやんねーこともない」
「!!」
「ダリィけど」
「それでも一緒に探してくれるの嬉しい!ありがとう!」
パァッと花が咲いたような顔で笑ったカノを、少年はチラリと見遣った。
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