第43章 執着は時として狂愛に
二人の男はカノを引き剥がし、両腕を掴む。
「離して…!!」
「これ以上騒ぐとぶっ飛ばすぞ」
「っ…………」
ビクッと体が跳ねる。
「白猫…さん…」
「シャー!!」
「(どうしよう…このままじゃ…)」
挟むようにして両側に二人の男が立っている。逃げ出すのは無理だ。三人はニヤニヤと笑いながら子猫を見ていた。
「(誰か…誰か…)」
そして男の手が子猫に触れようとした。
「誰か白猫さんを助けてぇ───!!!」
声を張り上げて泣き叫んだ瞬間…。
「ダリィことやってンなよ」
三人とは明らかに違う声が聞こえ、ハッとして顔を上げた視線の先にいたのは…
「(わぁ…背がおっきい。中学生かな?でもすごく気だるげ…。)」
首に手を遣り、ダルそうにしている少年だった。その少年の登場に、三人は訝しげな表情を浮かべる。
「あ?誰だテメェ?」
「俺が誰とかお前らに関係なくね?」
「何だと?」
「つか、そこのガキの喚き声が煩くて、黙らせに来たんだけど。何、猫いじめてんの?」
「(やっぱり味方じゃない!?)」
「テメェも混ざるか?」
「ダ…ダメ!!白猫さんを助けて!!」
「ダリィからやだ♥」
「え……?」
予想外の言葉に絶句する。"助けに来てくれたんじゃないの?"と云うような顔で見れば、少年は興味なさげに視線を逸らしている。
「ハハ!残念だったなチビちゃん!コイツが救世主に見えたんだろうがハズレだったってわけだ!」
「ウケる!断られてやんの!」
「…ひっく」
「!」
「どうして誰も白猫さんを助けてくれないのぉ…このままじゃ白猫さんが死んじゃうよぉ…ひっく…」
ついにポロポロと涙を流したカノ。それを見た少年は──何故か目を見開いた。それと同時に今まで感じた事のない感情が、胸の奥底から湧き上がるのを感じた。
「へぇぇ……」
カノの泣き顔を見た少年が意味深にニヤリと微笑み、首に手を当てる。
「気が変わった。助けてやってもいーぜ。」
「え?」
「トクベツな♥」
ポカンとした顔で少年を見れば、どこか愉しげに声を弾ませて笑った。
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