第43章 執着は時として狂愛に
「うるせえんだよクソガキ!黙れよ!」
「ひぅっ!」
「あービビってんぜコイツ!」
「(こ、こわい…)」
「退けよ、邪魔だ」
苛立った男がこちらに近付いて来ると、カノの体をドンッと突き飛ばす。
「い……っ」
ドサッと地面に倒れた時に肘と膝を擦りむき、痛みで涙が溢れそうになるも堪える。
「おー悪ィなあ。そんなに派手に転ぶと思わなかったわ」
「ふ、ぅ……」
「お、泣くんじゃね?」
「(っ…泣かない、泣かない…!)」
男達は楽しそうにケラケラと笑い、子猫に近付いて行く。子猫は怯えたような顔で精一杯な鳴き声で威嚇する。
「シャー!!」
「何だよ、まだ何もしてねーじゃん」
「むしろその汚ねー体を、水で洗い落としてやろうとしてるんだぜ?」
「俺達ちょー優しい〜♪」
明らかに何かを仕出かす顔をしている。安全に泥を洗い流すだけで済むのは思わなかったのか、危険を感じた子猫が弱々しく鳴く。
「(このままだと白猫さんが…)」
ヒリヒリと痛む膝と肘を我慢して、よろりと立ち上がり、怖がりながらも男の足にしがみついた。
「!」
「白猫さんに近付いちゃダメー!!」
「このガキ…」
涙を潤ませながら叫ぶカノに男は苛立ちを募らせ、ぐっと顔をしかめる。
子猫は自分を助けようとしているカノをじっと見つめていた。
「おい、何触ってンだ、離せよ」
「やっ!お兄さん達悪い人だもん!白猫さんから離れてーっ!!」
「あ"〜!!マジでうっぜえ!!いい加減離せよクソガキ…!!」
頭をガッと掴まれ、引き離そうとする男の足に両腕を回し、がっきりホールドする。
「はいはいチビちゃん、お前もうウッセーからちょっと黙れな?」
「そっちの腕掴んで引き剥がせ」
「白猫さん!逃げて!」
怖くて足が震えた。自分より遥かに大きい相手を一人で相手にするのは無謀だった。でもここで諦めたら誰が白猫を助けると云うのだろうか。
「お前らさっさとこのガキ引き剥がせよ!」
「意外に力あんなコイツ」
「早く!白猫さん!」
白猫は逃げる力が残っていないのか、そこから動こうとしない。
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