第43章 執着は時として狂愛に
「(今日は兄さんと一緒に夜ごはん作る約束してるから早く帰らなきゃ…!)」
学校からの帰り道、ランドセルの持ち手をギュッと握りながら、マドカの待つ家へと小走りで帰っていた時だった。
「シャー!!」
「!?」
公園の前を通ると突然、猫の威嚇する声が聞こえ、驚いて立ち止まる。
「今の…猫さんの声…」
早く家に帰らないといけないのだが、その威嚇した声は、助けを求めているかのような声にも聞こえた。
「(兄さんちょっと寄り道するね!)」
カノは意を決して、公園の中に入る。キョロキョロと周囲を見渡すと、中学生と思われる少年達が3人、白い毛並みをした小さい子猫をいじめていた。
「きったねー猫!」
「触ったらビョーキになりそー!」
「なんか匂いも臭ェし!」
木の棒で子猫を突っついて遊ぶ男達。それを見たカノは一瞬怯むも、勇気を振り絞り、子猫の前に飛び出した。
「いじめちゃダメー!!」
「あ?」
「なんだこのチビ?」
男達から子猫を守ろうと両手を広げる。自分より遥かに大きい男達を前にして、カノの体は恐怖でぷるぷると震えている。
「動物さんには優しくしないといけないんだよ!!あと木の棒で突っついちゃダメ!!」
「お前に関係ねぇだろ」
「それに俺達、いじめてねーしな」
「嘘!その棒で猫さんをいじめてたでしょ!私、見てたもん!」
「このガキうざくね?」
「汚いとか臭いって言ったら白猫さんが傷付くよ!ちゃんと謝って!」
「傷付く?その猫が?」
「プッ!はは!マジかよコイツ!」
涙を浮かべながら謝罪を要求するも、カノの言葉に男達は馬鹿にするように笑い飛ばす。
「さすがガキの言う事だわ!」
「動物に人間みてぇな感情なんかあるわけねーじゃん!」
「そんなことないもん!動物さんにもちゃんと人間と同じ感情はある!心だってある!悪口を言われたら悲しいし、酷いことされたら痛いんだよ!」
「なぁ、コイツ鬱陶しいんだけど」
「ガキに説教されんのムカつく」
「もうどっか行けよお前、うぜぇから」
「じゃあ白猫さんをいじめないで!」
男が煩わしそうに舌打ちをする。
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