第43章 執着は時として狂愛に
「元気ないね。もしかしてアイツらに何かされた?どこか怪我したとか…」
持ち上げたまま、腕や足に視線を移す。すると投げつけられた時に切ったのか、白猫の前足から僅かに血が出ていた。
「あのクズ共…どこまで卑劣なの。動物は玩具でも人形でもないっつーの」
怒りが抑えきれず、口が悪くなる。白猫を腕に抱え直し、水飲み場でハンカチを濡らして近くのベンチに座った。
「まずは手足についた泥を落とそうね」
膝に白猫を下ろし、汚れた足にハンカチを当てて泥を拭い落とす。そしてもう一度、水飲み場でハンカチの汚れを落として綺麗に洗い、再び白猫の元へと戻る。
「ちょっと染みるかも、ごめんね」
怪我した所にハンカチを軽くぽんぽんっと押し当てる。痛かったのか、白猫は前足を引っ込めようとした。
「痛いね。でもこうやって傷口を綺麗にしないとバイ菌が入って白猫さんが大変な思いするからね。ちょっとだけ我慢してくれる?」
「にゃあ…」
「うん、ありがとう」
白猫は引っ込めた前足をそろっと差し出した。優しく頭を撫でて、ハンカチをまたぽんぽんっと押し当てる。
「軽い応急処置になっちゃうけどごめんね。家に帰れば、消毒とか包帯とかあるんだけど…」
「にゃあ」
助けてくれたお礼を伝えるように、白猫はカノトのお腹辺りに顔を擦り寄せる。
「ふふ、くすぐったい。それにしても不思議だな。キミとは初めて会うはずなのに…なんだか懐かしい感じがする」
白猫は不思議そうに首を傾げた。
「うん…やっぱり気のせいじゃない。僕達、昔にどこかで会ったことあるよね?」
「にゃあ」
「そうだ…子供の頃にも怪我をした猫を助けた。あぁ…思い出したよ。昔この公園で、猫をいじめてる奴らがいたんだ──」
それはマドカと共に宮村家を出て、しばらくたった頃、同じような事があった。カノトは公園に目を向けながら、当時の記憶を手繰り寄せた。
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